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自由研究。
それは、読んで字のごとく、
「自由な研究」である。
本来は「自由」であるはずの「自由研究」。
研究とはすなわち「探究」や「追及」。
それを公表するのが「研究発表」だ。
先生からの評価。
研究学習から得られる知識。
研究に取り組むことで生まれる自主性。
研究で育まれる好奇心や探究心。
将来の可能性や進むべき分野との出会い。
点数や賞賛。満足度。達成感。
人によろこばれたいのか、
自分がよろこびを得たいのか。
何を目的として、
何を得るための「研究」なのか。
夏休みの自由研究。
上記のようなことは一切無視して、
ただただ、夏休みの自由研究に
取り組んでみました。
「無駄な時間を恐れるな」
そんなうつくしい言葉を胸に、
ぼくの研究を発表いたします。
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Long long time ago,
その昔、
自分が小学5年生だったころ。
ちまたで
「シミュレーション・ブック」
というものが流行した。
ご存知でしょうか、
シミュレーション・ブック。
アドベンチャー・ゲーム・ブックとか、
シミュレーション・ゲーム・ブックスとか
呼ばれるものもあったけれど、
基本的には同じ趣向のもの。
本を開き、読み進みながら、
本文に書かれた指示に従って、
その番号(ページ)に進むという、
昭和のアナログ・ゲームであります。
『死のワナの地下迷宮』や
『運命の森』などの、
高学年(または成年)向けの、
アドベンチャー・ゲームブック。
文字がメインではあったが、
その挿絵もすばらしかった。
難易度が高い作品が多く、
何度も最初からやり直し、
何日もその本と向き合った。
これらにどっぷり夢中になり、
発売されるたび書店へ走ったものだが。
当時のぼくの心を
とらえて離さなかったのは、
絵が大きく描かれたほうの
「シミュレーション・ブック」。
中でも「西東社」というところから
出版されていたシミュレーション・ブックが
お気に入りだった。
初めはその内容に魅了され、
冒険への興奮の虜(とりこ)になっていき。
次第に内容がどうであれ、
出たものは欲しい、という
収集欲まで「こちょばされ」て。
挙げ句の果てには、
A5とかA6とかの
小ぶりな大学ノートを買ってきて、
そこに自ら「シミュレーション・ブック」を
創作していった。
当時の能力と技術だから、
致しかたないことではあるが。
読み手を無視した、
熱意ばかりでどうしようもない
駄作・迷作シミュレーション・ブックを
量産しつづけた記憶がある。
*
そう。
その熱意。
そんな純度を掘り返したくて、
私、家原利明、
夏休みの自由研究に、
ちょっとした
"シミュレーション・ブック" をつくってみました。
当時にくらべ、
技術ばかりは少しついても、
能力や才能に大きな成長は見られませんが。
ほんの些細な「短編」ですので。
よければ手に取り、
シミュレーションなアドベンチャーに
おつきあいください。
懐かしき香り、
かぐわしき無駄な熱量を
嗅ぎ取っていただければ、
さいわいです。
これぞ「自由研究」。
「夏休み」は、
もうずうっと前に、
終わってしまいましたが。
あのわくわくと、
心おどるの日々の連続。
気持ちだけはいつも、
万年夏休みでお送りいたします。
冒険に出る準備が整った方は、
または、上のタイトルからどうぞ。
それではボン・ボヤージュ!
< 今日の言葉 >
アクサンテギュ
アクサングラーヴ
アクサンシルコンフレックス
トレマ
セディーユ
まほうのじゅもん
ではなく「アクサン5種類」。
アクサン:フランス語の「アクセント」の記号