2008/11/03

ネーミング


着替えのときなど、パンツを脱ぎ、
長袖Tシャツ(できれば白)だけになって。
裾の部分の中央を股にはさんで、


「タッちゃん」


と言いながら、
体の横で右手をくるくると回す(リボンのつもりで)。
これは、友人がいつも喜んでくれる
「ミナミちゃん」のマネだ。


それにしても、あだち充氏の作品は、
いさぎよいネーミングが多い。

単語一語のものがいくつもある。

『タッチ』『ラフ』
『ナイン』そして『みゆき』。

『陽当たり良好!』などの長い(?)タイトルもあるのだが。
あだち充氏の作品、といってぱっと頭に浮かぶものは、
やはり上記の4作だったりする。

『タッチ』が
「そこにタッチ」だとか
「ソフトタッチ」だったりしたら、
作品の魅力も激減して、
名作も「名作」になっていなかったかもしれない。


やっぱり、ネーミングは重要だ。


そういった点で言えば、
小林製薬のネーミング力も魅力的だ。

のどに塗るタイプの殺菌・消毒液『のどぬーるスプレー』。
気になるシミをケアする『ケシミン』。
指先の「さか剥け」を保護する『サカムケア』。
などなど。
商品について、詳しい説明を聞く前に、
何に働くのかがすぐに分かる。

ほかにも、
目からウロコのネーミングがいろいろある。

『ガスピタン』(腸にたまったガスを緩和させる薬)

『ムックミン』(足などのむくみを和らげる薬)


『ムックミン』って。
・・・なんだかすごくカワイイ。


「おれ、今日はちょっと、
 ムックミン飲もうかと思うんだけど」


もし仮に、こんなつぶやきを漏らしたら。
どんな悪人面でも、
悪い人ではなさそうに見えてしまうから不思議だ。

トイレの洗浄剤『ブルーレット』では、
『おくだけ』と『ドボン』とがある。

その名前を見た(聞いた)だけで、
「置くもの」なのか「入れるもの」なのかが、すぐに分かる。
まさに「スピード」のあるネーミングだ。

小林製薬には、
ものすごくセンスと音感のいい人がいるのだろう。
一度、商品会議の風景をのぞいてみたいものだ。


すてきなネーミングは、
お菓子界にもたくさんある。

最近ぐっときたのは『ポエムケーキ』というお菓子だ。

滋賀県東近江の高橋製菓本舗という会社の商品で、
クリームのはさまった、
UFO(アダムスキー型)のような形のクッキーだ。

まず、やられたのが
『ポエムケーキ』という、
ふんわりとした名前。

さらにその商品名の上(いわゆるショルダー)には、


「自然に詩のわきでてくる」


というコピーが乗っかっている。

昼下がりのテラス、素敵な人とふたりで。
『ポエムケーキ』をお茶菓子にして、コーヒーを飲む。
テラスの白い柵ごしに見えるのは、青々とした芝。
青い空には白い雲。
彼女が指を差し、こう言った。


「ねえ、あの雲。仔猫がダンスしてるみたい」


・・・ほら、言ってるそばから
ポエティックになってしまった。

( ※余談/いま「青い空」と入力して「蒼井そら」と変換された。
     一度も入力したことのない、AV女優の名前。
     おそるべし、現代の変換力。 )


『ポエムケーキ』。

その実直なパッケージデザインだけでなく、
高橋製菓本舗という社名のあとに
「高橋英夫」と名乗っているところに誠実さを感じる。


粋なネーミングでは、
『お一人さま』という小さな羊羹(ようかん)がある。
長野県の竹風堂という店の商品だ。
この栗ようかんを食べ終わったとき、

「ちょうどいい」

と感じたのは、
何もネーミングのせいだけではないと思う。

本当に、ひとりで食べるのに「ちょうどいい」大きさなのだ。
この大きさ(小ささ?)で、
たっぷりの栗を味わえる、濃厚な羊羹だった。


車を走らせていて見つけた看板で、

『クロレラキング豆腐』

というものがあった。
なにやら強そうな名前の豆腐だ。


少し前までの喫茶店は、
『樹帝夢』と書いて「ジュテーム」と読ませたり、
『来夢来人』と書いて「ライムライト」と読ませるなど、
しゃれた名前が多かった。

いまはおしゃれな横文字の名前がふえてきて、
漢字で「当て字」をするのは、
一部の暴走族くらいになってしまったのかもしれない。


横文字でも英語でも。
おっ、と思える深みがあるなら、興味もわく。
格好をつけるためだけの格好よさは、
逆にものすごく格好悪く見えてしまうのだけれど。
なんとなく見過して受け入れられてしまう格好よさも、
たくさんある気がする。


だから僕は、格好をつけない格好よさに、魅力を感じる。


そして気づいてみたら、単なる流行音痴。
人を笑わせていたつもりが、人に笑われていた。

そんなふうにはならないよう。
自分の定規をしっかり持ってね!



< 今日の言葉 >

「大きくなった油田の火事は
 ニトロで派手に吹き消すそうじゃないか・・・』

(『AKIRA』6巻/金田のセリフ)

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