#6






お、お金!
て、もうだまされないぞ。


足元のそれを素どおりするA男。


しばらくして背後で少年の声がした。


「わ、500円みっけ!ラッキー」


「しまった!本物かっ!」


思わず声に出してふり返ったA男の身体は、
その急激な動作に対応できず、
右首の付け根辺りをぐきりと鳴らした。


うう、と短い悲鳴をあげて、
しばしその場に固まる。


首を傷めたA男は、そのまま
右後ろを気にしたような姿勢で、


「あれぇ、こっちだったかな、
 あっちだったかなぁ」


などとつぶやき、
すれちがう人たちの視線をごまかしつつ、
家までの10分弱の道のりを
右後ろを見たまま歩きつづけるのであった。


「このままじゃダメだ」


帰宅後、鏡に映った自分を見て、
そう強く思った、A男であった。


(ライフ:−1ポイント