~ 登場人物紹介 ~
成程 聡太郎(なるほど そうたろう):
小学校にかよう中学1年生。
運動は大の得意。
でも、べんきょうが苦手。
給食で好きなメニューは、
舌平目のムニエル。
好きなにおいは、
タクシーの排気ガスのにおい。
清木 逸俵(きよき いっぴょう)先生:
どのように生きれば
しあわせになれるのか、
宇宙規模で考える偉大な博士。
好きなものは、おまんじゅう。
甘いものに目がない。
苦手なものは、片づけ。
研究室はいつも、
本や資料(?)であふれかえっている。
八白土星。乙女座のAB型。
店員さん:
派遣の仕事と販売職のアルバイトを
かけもちしながら、将来、
メジャーリーガーになることを夢見る
45歳の男の子(野球未経験)。
フォークリフトの免許と保育士、
カラーセラピストの資格を持つ。
好きな言葉は「テンメンジャン」。
* * *
店員さん:
いらっしゃいませー。
そうたろう:
あー、のどがかわいた。
どれにしようかな・・・。
あ、これこれ。
よし、これにしよっと。
イッピョー先生:
ちょっと待つのじゃ、
そうたろうくん。
どうしてそれに決めたのかな?
そうたろう:
え・・・? う~ん・・・。
本当はこっちのほうが
おいしいんだけど。
これ、安いから。
そのぶんちょっと、うすいけどね。
イッピョー:
いか~~~~~ん!
そうたろう:
うわっ! なに⁈
いきなりどうしたのっ⁈
イッピョー:
いいかな、そうたろうくん。
わしの目が黒いうちは、
断じてゆるさんぞよ。
いつでも真剣勝負。
一挙一動が、真剣勝負じゃ。
そうたろう:
でも・・・だって・・。
イッピョー:
デモもパレードもない。
いいかな、そうたろうくん。
キミが選んだのは、
本当にキミが、
いちばん飲みたいものなのかね?
そうたろう:
・・・いちばん、じゃあ、ないかな。
ほんとは、あっちがいちばんいい。
イッピョー:
ならばどうして
「いちばん」にしないのじゃ?
安いからという理由だけで、
第一希望をはねのけるとは、
さみしくないかね?
そうたろう:
・・・・・。
イッピョー:
いいかね、そうたろうくん。
第一希望を選ばず、
第二、第三のものばかり
選んでいたら、
キミはどんどん、
キミではなくなっていくゾ!
そうたろう:
ど、どういうこと・・・?
イッピョー:
本当のキミの意志がうすまって、
どんどんキミが「キミらしさ」を
うしなっていくのじゃ。
ちょうどその、お茶のように!
そうたろう:
うう、なるほど。
そうなのか・・・。
イッピョー:
いいかい、そうたろうくん。
うすまるのはキミだけではない。
この世の中がどんどん、
うすまっていくのじゃ。
ちょうどその、お茶のように!
そうたろう:
えっ、どういうこと、それ?
イッピョー:
たくさんの人たちが、
今のキミのように、
本当においしいものを選ばず、
安いからという理由で、
そのお茶を選ぶとしよう。
するとどうなるか?
・・・本当においしいはずの
そのお茶が、
世の中から消えてしまうのじゃ。
安いお茶に、
競争で負けてしまったからじゃよ。
わかるかな、そうたろうくん?
そうたろう:
なんとなく・・・。
イッピョー:
いっしょうけんめい、
汗水たらして。
いいものを作ろうとしている
人たちがいる。
その人たちは不器用で、
作るのは得意じゃが、
売ることがあまり上手ではないのじゃ。
だから、競争に負けてしまう。
たしかにそれは、
競争の原理かもしれない。
が、しかし。
もしキミが、そういう
「本当にいいもの」を見つけたならば。
・・・いいかね、そうたろうくん。
キミはその、きよき一票を、
「本当にいいもの」に、
投票してほしいのじゃ。
わかるかな、そうたろうくん?
そうたろう:
なるほど・・・。
先生、ぼく、
なんだかわかるような気がするよ。
イッピョー:
選挙やアイドルの
投票もいいのじゃが。
日々の、日常のなかにある投票を、
キミのそのきよき一票を、
大切にしてほしいのじゃ。
そうたろう:
なるほど・・・。
ぼくの、選ぶという行為そのものが、
世の中を動かし、
未来を決定づける大きな役割を
になっているというわけだね。
イッピョー:
ううっ、
いきなり回答の偏差値が
ぐぐっとあがったぞよ。
そうたろう:
つまり。
「本当にいいもの」を
残していくためにも。
適当に選んでちゃ、
ダメだってことだね。
イッピョー:
・・・・うんうん。
そうじゃ、そういうことじゃ。
キミはかしこい、いいコじゃな。
いつでも真剣勝負。
一挙一動が、真剣勝負、
というわけじゃ。
そうたろう:
けど、ぼくはいつでも
たくさんお金を
持っているわけじゃないし。
そんなとき、ぼくは、
どうしたらいいの?
イッピョー:
いいかね、そうたろうくん。
決めるのはいつも、
キミの心なんじゃ。
頭ではなく、心なんじゃ。
安いから、ではなく。
飲みたいからそれを飲む。
値段で決めるのではなく、
心で決めるのじゃ。
お金がないというのは
大きな理由にはならない。
本当にまったく
お金がないわけではないじゃろう?
そのたった60円の差で、
いったい何がどう変わるのか。
それを考えてみてほしい。
安いお茶を2本買うなら、
1回がまんして次に
「おいしい」お茶を買えばいい。
「飲みたい」お茶を買えばいい。
・・・大切にする、ということ。
その選択をあやまると、
キミの心がうすくなる。
ちょうどその、お茶のように!
そうたろう:
さ、3回目だ・・・。
たしかに先生は、うす味じゃないね。
どちらかというと、くどいみたい。
イッピョー:
たしかにわしは、くどいかもしれん、
顔も頭もあぶらっこいし、
おなかにもこんなぶあつい
あぶらをまとっておるし・・・。
そうたろう:
ごめんよ、先生・・・!
ちょっとぼくが言いすぎたよ。
本気じゃないよ、
じょうだんなんだ。
イッピョー:
ウォッホン・・・。
わしたる者、
そんなことですねるような、
ちっぽけな器じゃないわい。
そうたろう:
ほっ、よかった。
先生は偉大なる大先生ですからね。
イッピョー:
そうじゃそうじゃ。
こう見えてわしは、
偉大なる博士なんじゃ。
いつかわしもグラミー賞なんかを
手に入れて、みんなをあっと
言わせてやるぞい!
そうたろう:
先生がとるのは、
グラミー賞じゃなくって、
グラニュー糖ばっかりだもんね。
イッピョー:
・・・・・・。
そうたろう:
ゴメンね、先生。
もう言わないよ。
・・・で、偉大なる大先生様、
なんのお話でしたっけ?
イッピョー:
安物買いは銭失い、
という話じゃよ。
そうたろう:
だいぶ安易にまとめたな・・・。
イッピョー:
ん? 何か言ったかね?
そうたろう:
いいえ、なにも。
・・・安物買いの銭失い。
それって、けっきょく、
損ばかりしてて意味がないね。
イッピョー:
そうじゃな。まぁ、
まるで意味がないとも言えんが・・・。
そうたろうくんも何か、
思いあたるフシがあるじゃろう。
そうたろう:
そうだね。
たまたまワゴンセールで見つけた
大安売りのズボンを3本も買って、
どれもみんなサイズがぴっちぴちで、
2回もはかなうちに
ぜんぶおしりの部分がぱっくりと
やぶれちゃって、
けっきょく、大損こいたっていう、
そんなお茶目な場面を思い出すね。
イッピョー:
・・・そうたろうくん。
それは、わしのことを、
言っておるのかな・・・?
そうたろう:
やだなぁ、先生。
よくある事例です、
た、ただの偶然の一致ですよ。
・・・・先生、ぼく、
本当にいいものを見つけられる、
すてきな大人になりたいナ。
どうしたら先生のような、
すてきな大人になれるのかな?
イッピョー;
うわはははは・・・!
いきなり急には無理じゃよ。
トライ・アンド・エラー。
たくさんのものにふれて、
たくさん失敗したり、
いいものにふれて、
本当のよさを知ることじゃな。
そうたろう:
おのれの「ものさし」をみがけと。
イッピョー:
そう、それじゃ!
わしが今、
言おうと思っておった言葉、
そっくりそのままじゃ。
そうたろう:
トライ・アンド・エラー。
失敗なき人生は、
成功もうす味か・・・。
なるほど。
だから先生の研究室は、
あんなにもたくさんのもので
いっぱいなんだね。
イッピョー:
ま、まあ、そういうことじゃ。
失敗は成功のお母さん。
冒険なき人生は、
心の目を閉じて歩くのにひとしい。
わしの失敗は、みんな勲章じゃ。
宝物じゃ。・・・うんうん。
とにかくそういうことなんじゃ。
そうたろう:
でもさ、先生。
夕方になるとスーパーに行って、
半額になったおまんじゅうを
たくさん買うでしょ?
おはぎとかどら焼きとか。
先生、ちょっと買いすぎじゃない?
それってやっぱり安いから・・・・
イッピョー:
ちがう!
断じてちがう!
あれはじゃな、宇宙規模で
ものごとを考えた結果、
だれかがギセイになってじゃな、
その、地球の、エコのために、
フードロスを少しでも
削減するためにじゃな・・・。
そうたろう:
まあ、たしかに。
最初から「安かった」
わけでもないしね。
イッピョー:
そうじゃ、そうじゃとも。
買い物じょうずの目利きと
言ってくれたまえ。
そうたろう:
さすが先生。
ぼくもいつか、先生みたいな
立派ですてきな大人になりたいな。
イッピョー:
うぉほほほっほ・・・!
・・・・・・。
・・・で、いったい、
何の話じゃったかな?
そうたろう:
一挙一動が、真剣勝負。
自分が本当にいいと思うものに、
いつでもきよきイッピョーじゃ!
他人の声や行列にまどわされず。
おのれの感覚と価値観を信じて、
自分が本当にいいと思うものに、
きよきイッピョーじゃ!
イッピョー:
そうじゃそうじゃ!
きよきイッピョーじゃ!
店員さん:
ありがとうございましたー。
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11月1日は、
一挙一動がきよき1票の日
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< 今日の言葉 >
とあるキャバレーにて。
おしまいの時間になると、
お客さんに具なしのお味噌汁が
ふるまわれるとのこと。
「してそのこころは・・・?
『具・ない』→ Good Night~!」
(知り合いから聞いた、すてきなお話)