2023/11/01

一挙一動が、きよき一票 の巻



       ~ 登場人物紹介 ~





成程 聡太郎(なるほど そうたろう):


小学校にかよう中学1年生。

運動は大の得意。

でも、べんきょうが苦手。

給食で好きなメニューは、

舌平目のムニエル。

好きなにおいは、

タクシーの排気ガスのにおい。





清木 逸俵(きよき いっぴょう)先生:


どのように生きれば

しあわせになれるのか、

宇宙規模で考える偉大な博士。

好きなものは、おまんじゅう。

甘いものに目がない。

苦手なものは、片づけ。

研究室はいつも、

本や資料(?)であふれかえっている。

八白土星。乙女座のAB型。





店員さん


派遣の仕事と販売職のアルバイトを

かけもちしながら、将来、

メジャーリーガーになることを夢見る

45歳の男の子(野球未経験)。

フォークリフトの免許と保育士、

カラーセラピストの資格を持つ。

好きな言葉は「テンメンジャン」。




* * *




店員さん:

いらっしゃいませー。



そうたろう:

あー、のどがかわいた。

どれにしようかな・・・。

あ、これこれ。

よし、これにしよっと。



イッピョー先生:

ちょっと待つのじゃ、

そうたろうくん。

どうしてそれに決めたのかな?



そうたろう:

え・・・? う~ん・・・。

本当はこっちのほうが

おいしいんだけど。

これ、安いから。

そのぶんちょっと、うすいけどね。



イッピョー:

いか~~~~~ん!



そうたろう:

うわっ! なに⁈

いきなりどうしたのっ⁈



イッピョー:

いいかな、そうたろうくん。

わしの目が黒いうちは、

断じてゆるさんぞよ。

いつでも真剣勝負。

一挙一動が、真剣勝負じゃ。



そうたろう:

でも・・・だって・・。



イッピョー:

デモもパレードもない。

いいかな、そうたろうくん。

キミが選んだのは、

本当にキミが、

いちばん飲みたいものなのかね?



そうたろう:

・・・いちばん、じゃあ、ないかな。

ほんとは、あっちがいちばんいい。



イッピョー:

ならばどうして

「いちばん」にしないのじゃ?

安いからという理由だけで、

第一希望をはねのけるとは、

さみしくないかね?



そうたろう:

・・・・・。



イッピョー:

いいかね、そうたろうくん。

第一希望を選ばず、

第二、第三のものばかり

選んでいたら、

キミはどんどん、

キミではなくなっていくゾ!



そうたろう:

ど、どういうこと・・・?



イッピョー:

本当のキミの意志がうすまって、

どんどんキミが「キミらしさ」を

うしなっていくのじゃ。

ちょうどその、お茶のように!



そうたろう:

うう、なるほど。

そうなのか・・・。



イッピョー:

いいかい、そうたろうくん。

うすまるのはキミだけではない。

この世の中がどんどん、

うすまっていくのじゃ。

ちょうどその、お茶のように!



そうたろう:

えっ、どういうこと、それ?



イッピョー:

たくさんの人たちが、

今のキミのように、

本当においしいものを選ばず、

安いからという理由で、

そのお茶を選ぶとしよう。

するとどうなるか?

・・・本当においしいはずの

そのお茶が、

世の中から消えてしまうのじゃ。

安いお茶に、

競争で負けてしまったからじゃよ。

わかるかな、そうたろうくん?


そうたろう:

なんとなく・・・。



イッピョー:

いっしょうけんめい、

汗水たらして。

いいものを作ろうとしている

人たちがいる。

その人たちは不器用で、

作るのは得意じゃが、

売ることがあまり上手ではないのじゃ。

だから、競争に負けてしまう。

たしかにそれは、

競争の原理かもしれない。

が、しかし。

もしキミが、そういう

「本当にいいもの」を見つけたならば。

・・・いいかね、そうたろうくん。

キミはその、きよき一票を、

「本当にいいもの」に、

投票してほしいのじゃ。

わかるかな、そうたろうくん?


そうたろう:

なるほど・・・。

先生、ぼく、

なんだかわかるような気がするよ。


イッピョー:

選挙やアイドルの

投票もいいのじゃが。

日々の、日常のなかにある投票を、

キミのそのきよき一票を、

大切にしてほしいのじゃ。



そうたろう:

なるほど・・・。

ぼくの、選ぶという行為そのものが、

世の中を動かし、

未来を決定づける大きな役割を

になっているというわけだね。



イッピョー:

ううっ、

いきなり回答の偏差値が

ぐぐっとあがったぞよ。



そうたろう:

つまり。

「本当にいいもの」を

残していくためにも。

適当に選んでちゃ、

ダメだってことだね。



イッピョー:

・・・・うんうん。

そうじゃ、そういうことじゃ。

キミはかしこい、いいコじゃな。

いつでも真剣勝負。

一挙一動が、真剣勝負、

というわけじゃ。



そうたろう:

けど、ぼくはいつでも

たくさんお金を

持っているわけじゃないし。

そんなとき、ぼくは、

どうしたらいいの?



イッピョー:

いいかね、そうたろうくん。

決めるのはいつも、

キミの心なんじゃ。

頭ではなく、心なんじゃ。

安いから、ではなく。

飲みたいからそれを飲む。

値段で決めるのではなく、

心で決めるのじゃ。

お金がないというのは

大きな理由にはならない。

本当にまったく

お金がないわけではないじゃろう?

そのたった60円の差で、

いったい何がどう変わるのか。

それを考えてみてほしい。

安いお茶を2本買うなら、

1回がまんして次に

「おいしい」お茶を買えばいい。

「飲みたい」お茶を買えばいい。

・・・大切にする、ということ。

その選択をあやまると、

キミの心がうすくなる。

ちょうどその、お茶のように!



そうたろう:

さ、3回目だ・・・。

たしかに先生は、うす味じゃないね。

どちらかというと、くどいみたい。



イッピョー:

たしかにわしは、くどいかもしれん、

顔も頭もあぶらっこいし、

おなかにもこんなぶあつい

あぶらをまとっておるし・・・。



そうたろう:

ごめんよ、先生・・・!

ちょっとぼくが言いすぎたよ。

本気じゃないよ、

じょうだんなんだ。



イッピョー:

ウォッホン・・・。

わしたる者、

そんなことですねるような、

ちっぽけな器じゃないわい。



そうたろう:

ほっ、よかった。

先生は偉大なる大先生ですからね。



イッピョー:

そうじゃそうじゃ。

こう見えてわしは、

偉大なる博士なんじゃ。

いつかわしもグラミー賞なんかを

手に入れて、みんなをあっと

言わせてやるぞい!



そうたろう:

先生がとるのは、

グラミー賞じゃなくって、

グラニュー糖ばっかりだもんね。



イッピョー:

・・・・・・。



そうたろう:

ゴメンね、先生。

もう言わないよ。

・・・で、偉大なる大先生様、

なんのお話でしたっけ?



イッピョー:

安物買いは銭失い、

という話じゃよ。



そうたろう:

だいぶ安易にまとめたな・・・。



イッピョー:

ん? 何か言ったかね?



そうたろう:

いいえ、なにも。

・・・安物買いの銭失い。

それって、けっきょく、

損ばかりしてて意味がないね。



イッピョー:

そうじゃな。まぁ、

まるで意味がないとも言えんが・・・。

そうたろうくんも何か、

思いあたるフシがあるじゃろう。



そうたろう:

そうだね。

たまたまワゴンセールで見つけた

大安売りのズボンを3本も買って、

どれもみんなサイズがぴっちぴちで、

2回もはかなうちに

ぜんぶおしりの部分がぱっくりと

やぶれちゃって、

けっきょく、大損こいたっていう、

そんなお茶目な場面を思い出すね。



イッピョー:

・・・そうたろうくん。

それは、わしのことを、

言っておるのかな・・・?



そうたろう:

やだなぁ、先生。

よくある事例です、

た、ただの偶然の一致ですよ。

・・・・先生、ぼく、

本当にいいものを見つけられる、

すてきな大人になりたいナ。

どうしたら先生のような、

すてきな大人になれるのかな?



イッピョー;

うわはははは・・・!

いきなり急には無理じゃよ。

トライ・アンド・エラー。

たくさんのものにふれて、

たくさん失敗したり、

いいものにふれて、

本当のよさを知ることじゃな。



そうたろう:

おのれの「ものさし」をみがけと。



イッピョー:

そう、それじゃ!

わしが今、

言おうと思っておった言葉、

そっくりそのままじゃ。



そうたろう:

トライ・アンド・エラー。

失敗なき人生は、

成功もうす味か・・・。

なるほど。

だから先生の研究室は、

あんなにもたくさんのもので

いっぱいなんだね。



イッピョー:

ま、まあ、そういうことじゃ。

失敗は成功のお母さん。

冒険なき人生は、

心の目を閉じて歩くのにひとしい。

わしの失敗は、みんな勲章じゃ。

宝物じゃ。・・・うんうん。

とにかくそういうことなんじゃ。



そうたろう:

でもさ、先生。

夕方になるとスーパーに行って、

半額になったおまんじゅうを

たくさん買うでしょ?

おはぎとかどら焼きとか。

先生、ちょっと買いすぎじゃない?

それってやっぱり安いから・・・・



イッピョー:

ちがう!

断じてちがう!

あれはじゃな、宇宙規模で

ものごとを考えた結果、

だれかがギセイになってじゃな、

その、地球の、エコのために、

フードロスを少しでも

削減するためにじゃな・・・。



そうたろう:

まあ、たしかに。

最初から「安かった」

わけでもないしね。



イッピョー:

そうじゃ、そうじゃとも。

買い物じょうずの目利きと

言ってくれたまえ。



そうたろう:

さすが先生。

ぼくもいつか、先生みたいな

立派ですてきな大人になりたいな。



イッピョー:

うぉほほほっほ・・・!

・・・・・・。

・・・で、いったい、

何の話じゃったかな?



そうたろう:

一挙一動が、真剣勝負。

自分が本当にいいと思うものに、

いつでもきよきイッピョーじゃ!


他人の声や行列にまどわされず。

おのれの感覚と価値観を信じて、

自分が本当にいいと思うものに、

きよきイッピョーじゃ!



イッピョー:

そうじゃそうじゃ!

きよきイッピョーじゃ!



店員さん:

ありがとうございましたー。




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11月1日は、


一挙一動がきよき1票の日


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< 今日の言葉 >



とあるキャバレーにて。


おしまいの時間になると、

お客さんに具なしのお味噌汁が

ふるまわれるとのこと。


「してそのこころは・・・?

 

 『具・ない』→ Good Night~!」


(知り合いから聞いた、すてきなお話)