2022/05/19

展覧会の絵日記 2022 〜其の3〜




 

* * *


全3回でお送りしている
このシリーズ。

今回は『其の3』、
最終回(#16 〜 #21)です。




面と向かって直接は、
恥ずかしくて言えないこと。

文章だから言えること。

ちょっと格好つけて、
言ってみたかったこと。


そんなことも詰め込みました。


だからどうか、
くれぐれもここだけの話にしてください。



感動の最終回。


それではどうぞ、ごゆっくり。










3月28日

#16『No.16』


あれこれ模索しながら、
ああでもないこうでもないと描いた絵。

紆余曲折しながら、
最後、香水の瓶の絵になった。

題名は、この絵が展覧会のための新作
「16枚目」の絵だったから。










4月6日

#17『どうぶつ』


4月に入って1枚目の絵は、
こんな絵に仕上がった。

迷わずまっすぐ、
真っ白な気持ちで。

とにかくネコ科の動物を描いた。


犬好きのぼくではあるが。
猫やネコ科の動物も好きである。

ネコ科の動物は、
描いて楽しい動物が多い。

模様や曲線、その仕草。

図鑑ではなく、
動物園でもサバンナでもいいから、
本物の動物が見たい。

って。

この絵を前にしては、
何の説得力もない発言ですね。









4月6日

#18『公園のねこ』



先の発言の
つづきではないけれど。

やはり、
本物から得られる「情報」は、
たとえ対面したのが数秒間であっても、
その量と質がまるでちがう。


公園で見た野良猫。

彼または彼女は、
目が合うとぴたり歩みを止めて、
こちらを威嚇(いかく)するように
鋭くにらみを利かせてきた。

風に散る桜吹雪には目もくれず。
貫禄(かんろく)ある姿でじっと固まり、
目やにだらけの視線を浴びせ続ける。


その間、わずか3、4秒。


動物どうしのにらみ合い。


やがて危害のない存在だと悟った野良猫は、
ゆったりとした歩みで何事もなく、
ぼくの目の前を横切っていった。


そんな瞬間のひとコマ。



本物の息づかい。

本物の迫力。

本物の、野生のすごみと空気感。



この絵でもやはり、
説得力のない言葉の羅列、ですかね。









4月12日

#19『やや大きめの微生物』



18枚目の絵を描き終えて。

しばらくは
案内状(DM)の宛名書きなどに
時間を費やしていた。

図鑑を見て絵を描いたり、
思うままに手を動かしたり。
宛名書きをしながらも、
スケッチブックへのお絵描きはしていた。

おかげで寝るとき、
右手を伸ばすと、腕が痛かった。

スナックの袋などを開けるときには、
右手親指、人差し指が痛かった。

スナックの袋を
はさみで開封するなんて。

まるでお姫さまにでも
なったような気持ちだわ。



数日間の「空白」のあと。


手を動かすと、
こんな形が踊り出した。

図鑑を見ていて
何となく頭に残っていたのか。

ぼくにはそれが微生物に見えた。


大きめの微生物は、
もはや微生物ではなく、
ただの生物なのだろうか。


形のないものにも、形状はある。

見たことがないからこそおもしろい。


既知だけでなく、
未知のものへの好奇や理解も
深めていきたいものですね。









4月13日

#20『おめかししたサボテン』



80年代の話。

小学生のぼくは、
『宇宙船サジタリウス号』という
アニメが好きだった。

そこには、サボテンのような姿をした
「シビップ」というキャラクターが登場する。

初めのうち、

「ペポペポ」

という意味をなさない「声」ばかりを
発していたシビップだが。

いつも背負っている、
琵琶(びわ)のような形の楽器で唄い出すと、
みながうとっり、
その唄声に聴き入ってしまう。


そんなシビップが、
どんな流れでどんな話だったかも忘れたが、
いきなり「地球語」を話し出したときには。

物語に登場するトッピーやラナと同じくらい、
ぼくもびっくりした。


そんな記憶が、
関係しているかどうかは
わからないけれど。

サボテンを見ると、
何か「意思」のようなものを
感じずにはいられない。


頭にふたつ、
白い花をちょこんと乗っけたサボテンは、
話すことも唄うこともないけれど。
たしかにそこに存在している。


そんな「存在感」。


「そこに在る」感じが出せたと思う。


何も言わないからといって、
何も感じていないわけじゃない。

しゃべらないからこそ、
感じていることもある。



かつても引用した話。

ソロモン諸島の原住民には、
道具を使わず、
声だけで木を倒す「猛者(もさ)」がいるという。

来る日も来る日も、
早朝に、木に向かって罵声を浴びせる。
するとある日、
突然その木が折れて倒れるそうだ。



サボテンや鉢植えの花も、
猫でも犬でもカラスでも。

もしかすると、
車やパソコンなんかにも、
おなじことが言えるかもしれない。


逆もまた、しかり。


じっと黙ったサボテンは、
言葉の代わりに花を咲かせた。


そんなふうに思うと、
世界がとっても
チャーミングに見えてきますね。


けど、うっかり手は出さないでね。
私には、とがった棘(とげ)があるから。









4月16日

#21『うつくしき世界』



風景画としての肖像。

たくさんの色。
流れ、形、構図。



この日の夜、久しぶりに、
映画『ガタカ』を観た。


2年ほど前にも観ているが。

古い記述を見ると、
2014年ごろにも観ていたらしい。

https://aoaocuq.blogspot.com/2014/05/blog-post.html


そのときの引用はこれ。



『欠点を探すのに必死で、気づかなかっただろ。
 ・・・・可能だっていうことを』

「They've get you looking for any flaw,
 that after a while that's all you see.
 ....... It is possible.」

(映画『GATTACA(ガタカ)』のセリフより)



自分自身で「レッテル」を貼り付けて、
やる前からあきらめる口実を信じきってしまっている。

そんな相手に向けられた言葉だが。


ほかにもまだ
好きな台詞(セリフ)がある。


泳ぎくらべをする場面で、
かつての勝因を尋ねる弟・アントンに、
主人公・ヴィンセントがこう答える。



『あのときどうしたか知りたいか?
 今と同じだ。
 戻ることなんて考えずに全力で泳いだんだ』

「You wanna know how I did it?
 This is now I did it Anton.
 I never saved anything for the swim back.」



ちなみにこの「ヴィンセント」という名前は、
みなさんご存知の画家、
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホから来ている。



やらない理由なんて、
いくらでも見つけられる。


挫(くじ)けそうになったとき。
勇気をもらいたいとき。
ヴィンセントに会いたくなったとき。

そんなときぼくは『ガタカ』を観る。



うつくしき世界。


それは、目の前にある。

見えないのは自分のせい。


こたえは全部、自分の中にある。











4月17日

#22『あたらしい朝』



「最新作が最高傑作」

いつもそう思って
描いているのだけれど。

この絵が描けたとき、
迷わずすぐにそう思えた。


だからこれを最後の絵にした。



この絵は、
いったん途中で止めて、
翌日完成させた。


1日1枚の絵の、最後の1枚は、
2日がかりで描いた。




この絵を描いて思い出した、
一編の詠(うた)。


最後にそれを引用して、
締めくくらせていただきます。




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『朝』



何回目の朝か

久しぶりに
この目で朝を見た


夜明け

夜ばかりでもないし
雨ばかりでもない

すべて流転するって
本当なんだな


鳥が鳴く


鶯(うぐいす)の声

3月中旬には下手だったさえずりも
一昨日ごろには上手くなっていた

そう思ったころに
声は聞こえなくなった


ベランダには
散った桜の花びらが
溶けない雪のように
降りつもっている

4月

何かが動き出している

世界が動きはじめたのか
それとも自分が動きはじめたのか


結局はどちらも
おなじことか


止まって見えた
景色と時間が
急に ゆったりと
動きはじめた

そんなことを教えるために
夜中に目覚めて
今こうして
朝を眺めている


何十億分の1の
大して意味のない
ただの朝かもしれないけれど

自分にはそれが
力づよくてやさしい
手のひらのように感じた


『朝』/詠み人知らずの詠(うた)》





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ご静聴ありがとうございます。


いかがでしたでしょうか。

もしお時間があれば、
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□すごく面白かった

□大変ためになった

□非常に興味深かった

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□時間を返せ

□知人からの紹介で

□今は自分ことで精いっぱい

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該当する項目の□に、
チェックを入れてください。

(複数回答可・油性ペンでお願いします)

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< 今日の言葉 >


鼻をほじっていて。

その指を引き抜くと、
指先にからまるようにして、
想像以上に大きなものが現れた。


「私は鼻くその精霊。願いを叶えよう」


そんな夢を 見た朝に限って
見つからない靴下


(『イエハラ・ノーツ2022』より。
  後半部分は、BLANKEY  JET  CITY『Soon Crazy』より)



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