古いノートを読み返していたら、
こんな文章に目がとまった。
たぶん、書きかけた小説のネタか何かだと思う。
(以下、ノートの書き写し)
12月。
雪山へUFOを見に行く。
「彼」を含めた4名(彼、男、男、女)のパーティで。
「彼」は唯一の登山経験者で、
その経験と知識を買われて誘われた。
UFOの「秘密」を守るため、
この計画は誰にも話していない。
無許可(または偽名)で入山。
ひと気のない古びたバンガローで、各人が落ち合う。
火にあたりながら、UFOの話をする4人。
そのなかのひとり(男)が、「彼」の自尊心を傷つけた。
皆にバカにされたと思う「彼」。
「彼」が好意を寄せる彼女(女)も笑っている。
吹雪。奥深い山。
必死に山頂を目指す4名。
「彼」を真っ先に笑った男が
窮地(きゅうち)に立たされたとき、
命運を握る「彼」が、
“ 思わず ” ザイル(登山用ロープ)を放してしまう。
先頭にいた人物(男)に、“ 故意 ” だということを
“ 悟られた ”ような思いに苛まれる。
一命を取り留めた4名。
雪深いなかでビバーク
(不時泊。緊急時のやむをえない停泊)をする。
何とかして助かりたい。
そう思った「彼」は、
ひとり、ザイルを足に結わえつけて
辺りの様子をうかがった。
吹雪のなかをむやみに歩き回ることは危険だと、
登山経験豊富な「彼」は重々承知のはずだったが。
疑心暗鬼もあってか、「彼」は、
すっかり平常心を失っていた。
と、「彼」の目に、
3つの人影が近づいてくるのが見えた。
再び吹雪きはじめた視界は、古ぼけた映画のように、
うっすらとした陰影がおぼろげに見えるだけ。
夢中で影を突き飛ばす。
悪霊でも追い払うように。
3つの影が、音もなく消えた。
雪深い、斜面の先。
目の前には、うす黒い渓谷だけが広がっていた。
ひとり、下山した「彼」は、
幾日か経ったある日、
こんな記述を読んだ。
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発見された死体。
3体。
女の遺体は、雪に埋もれていたせいか、
腐敗の進行が遅く、大きな損傷もなかった。
生活反応のある傷が、
左肩と右足首脱臼だったことから、
死因は凍死と判断。
男の遺体、2体のうち1体は、
損傷が激しく、見た目に身元を
判別するのも難しいほどだった。
陽の当たる場所にあったせいで腐敗も激しく、
そのうえ、おそらく冬眠あけであろう、
空腹のクマらしき動物の餌食となっており、
頭蓋骨が砕かれ、
内蔵もほとんど残っていない状態だった。
もう一方の、男の遺体は、
少し離れた谷の中ほどで発見された。
死因は頸部(けいぶ)の打撲によるものだった。
生活反応のない、死後の傷からは、
何ら不自然な様子も見られず、
転落の際に負った傷跡だと判定。
それにより、ほぼ即死状態だったと判断。
岩壁に突き出た岩に頸部を打ちつけ絶命、
そののち、岩にぶつかりながら
谷まで転げ落ちたと推測。
こちらの身元は、
歯科の記録と親族によって明らかになった。
前者2名は、
生存者からの供述で招かれた親族によって、
「本人」との確認がなされた。
(通院のカルテなし、病歴なし)
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「彼」は思った。
例の「3体」も。
雪どけの川に流されたか、
それとも空腹のクマが運び去ったか。
永久凍土のマンモスのように、
いまも静かに眠りつづけているのか。
3人の遺体は、
いまだ発見されず、
どれも「行方不明」のままだ。
ひょっとしたら、生きているのかもしれない。
毎晩のように、
「彼」は、同じ夢に悩まされる。
3人と、3つの影。
手を放す映像。フラッシュバック。
「違うんだ、わざとじゃないんだ」
「彼」はおびえる。
日々、おびえて暮らす。
3つの影。3人の影。
そして、目の粗い、
ヒモ状の手ざわりにザイルを思い出す。
「違う、あれはわざとじゃない」
繰り返し「彼」は言う。
自分に言い聞かせるようにして。
見えない「影」におびえながら。
「彼」は “ 平穏な ” 日常を生き続けている。
たとえ目を閉じても、眠っても。
その影が消えることは、決してない。
(以上、ノートの抜粋)
さて。
そんなぼくが最近見た夢は、
SMAP(スマップ)の一員になって、
ステージに立つ夢だ。
6人目のSMAPとして(正確には7人目か)、
ステージのソデでスタンバイするぼく。
今回のステージが、
SMAPとしてのぼくの初舞台でもある。
ほかのメンバーに比べて
“ 若干 ”見劣りする自分を気にして、
ややナーバスになっている。
緊張が半端じゃない。
硬直する姿を見て、
木村(拓哉)くんがぼくの肩をポンと叩いた。
「大丈夫だって」
力強い、木村くんの手が、ぼくの肩をつかむ。
ステージの向こうからは、大声援が聞こえてくる。
白い歯をのぞかせて、ひとつうなずく木村くん。
ぼくは、少し表情をゆるめて、
大きくうなずき返した。
「よし行くぞ!」
円陣を組んで、掛声をかけると、
音楽が鳴り響いてステージに向かって走り出した。
まぶしい光と声援。
ぼくは、そこで目を覚ました。
・・・・なんじゃこりゃ。
起きたとき、
少しバカバカしく思って、ふっと笑って、
そのあと少し、恥ずかしくなった。
そして思った。
やっぱり木村くんは、かっこいいな、と。
< 今日の言葉 >
「同情するなら金をくれ」
(家なき子)
「お金なんかより、やさしさをください」
(家のある子)