「!!?」
玉のように転がる汗に目をしかめながら、
肩に感じた力にふり向くと、
グレーの制服を着た警備員が立っていた。
話せば長いストーリー。
事のあらましを
説明したくても言葉にならず、
そのまま店の事務室へと連行されるA男。
上品な感じの男性店員に、
静かで丁寧な口調で警告を受け、
さらには白いエプロンの
アルバイト女性がこちらを指差し、
「あ!あの人です、はんぺん泥棒」
と、大きな声で指摘され、
おだやかに店への出入り禁止を告げられたA男は、
「ちぇっ、ついてねえや」
と、先ほどの「ニセ100円」を足蹴にしつつ、
5年間こつこつ貯めつづけた
スーパーのポイントカードを
未練がましく眺めながら、
重い足取りでしぶしぶと店をあとにした。
そう。
A男が決意を固めたのは、
そんな昼下がりの午後のことだった。
「これじゃもてねえや」