#17





「ラッキーデイじゃん」


そう思って心ときめかせていたのもつかの間。
たのしい時間はあっという間に過ぎるものである。


残念ながら、
降りるべき駅が近づいてきた。

このまま降りないでおこうか。

そうも思ったりしたが、
夜7時からのアニメ
『さりとてメガミちゃん』のつづきが
どうしても気になるところ。


「さよなら、カワイ子ちゃん」


A男の脳裏には、
斜陽にたたずむ西部劇のガンマンの姿があった。
拳銃の先で持ち上げた
テンガロンハットの縁(ふち)から見下ろすように。
右肩に乗っかった頭にそっと
心の中で別れを告げて、
ゆっくり立ち上がろうとした、そのとき。


「あ、すみません」


女の子がはっとして目を覚ました。


きょろきょろと辺りを見回した彼女は、
A男よりも先に立ち上がり、
降りる支度をはじめた。


なんだ、同じ駅だっんだ。

内心ほっとするやら、戸惑うやら。
その事実が、新たなときめきを誘った。


地上にあがると、
雨が、降っていた。


そこに、見覚えのある背中があった。
肩を貸した、彼女だった。

彼女は、突然の雨に
立ち往生しているようだった。


さあ、どうしよう。