「ラッキーデイじゃん」
そう思って心ときめかせていたのもつかの間。
たのしい時間はあっという間に過ぎるものである。
残念ながら、
降りるべき駅が近づいてきた。
このまま降りないでおこうか。
そうも思ったりしたが、
夜7時からのアニメ
『さりとてメガミちゃん』のつづきが
どうしても気になるところ。
「さよなら、カワイ子ちゃん」
A男の脳裏には、
斜陽にたたずむ西部劇のガンマンの姿があった。
拳銃の先で持ち上げた
テンガロンハットの縁(ふち)から見下ろすように。
右肩に乗っかった頭にそっと
心の中で別れを告げて、
ゆっくり立ち上がろうとした、そのとき。
「あ、すみません」
女の子がはっとして目を覚ました。
きょろきょろと辺りを見回した彼女は、
A男よりも先に立ち上がり、
降りる支度をはじめた。
なんだ、同じ駅だっんだ。
内心ほっとするやら、戸惑うやら。
その事実が、新たなときめきを誘った。
地上にあがると、
雨が、降っていた。
そこに、見覚えのある背中があった。
肩を貸した、彼女だった。
彼女は、突然の雨に
立ち往生しているようだった。
さあ、どうしよう。