#12







「う〜ん、さすがにいきなり2からは、
 ハードルが高かったか」


話題作『ストレンジャーナイト2』。

前作の『1』を観ていないA男には、
難解というより、
ひたすら置いていかれる場面の連続だった。

まず、登場人物の関係性やら設定が分からない。

みなが笑う場面に出遅れ、
みなが鼻をすする場面で笑ってしまい、
白い目で見られた。


「やっぱり、話題作っていうのは、
 自分には合わないな」


負け惜しみのような、
それでいてすがすがしいほど
理解できなかった内容にノック・アウト。
それでもやっぱり気になって、
ハンバーガーショップにて
いろいろ検索してみる。


「ああ、そうなんだぁ。
 ミゲルとエデルは双子だったんだ」

などと心底、感心、会心のうなずき。

「そうか。ナイトっていうのは、
 夜のことじゃないんだな。
 ナイトって、騎士のことなんだな」


けれど、調べるほどに、
分かった気がしていたことまで
分からなくなってしまった。


「え、え、え?
 トライアングル・ジェネレーションってのは
 何なんだ?」


堂々巡(めぐ)りの袋小路。
A男には、みながわーわー言っている意味が、
さっぱり分からなかった。


「とにかく、前作をしのぐ空前の制作費で、
 たくさんの賞にもノミネートされたんだから。
 そりゃあ、いい映画に違いないんだよな。
 いつか『1』も観てみないとな」


A男はひとり、納得した。


「観るには観たし、
 なんか、おもしろかった気がするし。
 だから、ま、いいか」


ポテトやバーガーに
すっかりお腹が満たされたA男は、
なんだかしあわせな気持ちでいっぱいになり、
大満足のご満悦の面持ちであった。


「なんか眠くなってきたな」


むくむくとわき上がった満足感と反比例するように、
あれほど熱かった『1』への興味も、
初めからなかったかのごとく冷え冷えと薄れていった。


外はもう暗くなっていた。


「やっぱり、映画っていいもんだなぁ」


地下鉄の到着を待ちながら、A男は、
またひとつ自分がおしゃれになった気がして、
少しだけ胸を張っていた。


(ライフ:+1ポイント