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| 『幾つもの波をこえていく舟』(2014) |
*
小学1年生の時のことだ。
りょうちゃんとは、
「あいうえお順」が前後で、
通学路もほとんど一緒だった。
仲よくなった僕たちは、
学校が終わった後にも
よく遊んだ。
秋の終わりの
頃だったように思う。
りょうちゃんの家で遊んでいて、
宝物を見せるようにして
りょうちゃんが言った。
「これ、
やっきょうだよ」
「やっきょう?」
「らっきょう」しか知らなかった
当時の僕には、
それが何であるか、
すぐにはわからなかった。
「ピストルのたまだよ」
正確には、
ピストル(銃)を撃った後に残る、
弾の「ぬけがら」みたいなものだが。
当時の僕たちには、
その区別も、
正確な役割も理解できておらず、
そんなことよりも
「鉄砲の弾」ということに
驚きと興奮を覚えていた。
「じえいたいのおにいちゃんが、
くれたんだよ」
耳慣れない言葉ばかりが並び、
ぼんやりとおぼろげな解釈で
ふわふわ想像する僕に、
りょうちゃんの手から、
「やっきょう」が手渡される。
薬莢——真鍮製の、
くすんだ黄色の金属は、
鉛筆よりは太く、
マッジクペンよりは細い。
ちょうど『お名前ペン』くらいの
太さだろうか。
長さは、
小指の第二関節くらいだった。
「やっきょう」の先端の、
穴の開いた部分には、
棒状の四角い金属部品が
小さく舌を出すようにして、
出たり、引っ込んだりする。
「顔」をちらりとのぞかせる程度で、
完全には出てこない。
振ると、カシャカシャ音がして、
その「棒」が前後に動いた。
見るだけでなく、
いろいろいじくりまわしてみると、
その「やっきょう」は、
頭と胴と、底の部分、
三つの部品に分解できた。
ねじ込み式の頭を外すと、
四角い棒状の部品が出てきた。
「いっこあげる」
「え、いいの?」
太っ腹なりょうちゃんに、
喜びの顔をきらきらと向ける。
「うん。
おにいちゃんにいえば、
またたくさんくれるから」
僕らの横には、かずおもいた。
かずおは何も言わず、
じっと僕らの話を
聞いていた(と、思う)。
「いっぱいもらえるの?」
「うん。
やっきょうは、
すごくいっぱいあるんだって」
「へえぇ・・・」
感嘆の声を上げる僕に、
りょうちゃんが言った。
「もらいにいこうか?」
「もらえるの?」
「おにいちゃんのうちにいけば、
たぶんまたもらえる」
ここで言う「おにいちゃん」は、
本当の「お兄ちゃん」ではない。
りょうちゃんのお兄ちゃんは、
1歳上で、同じ家に一緒に住んでいる。
「おにいちゃん」とは、
親戚の「おにいちゃん」の
ことだった。
当時の僕が、
そのあたりを追求した記憶はない。
それでも何となく、
そういうことだと理解した。
自分で言うところの、
「東京のにいちゃん」みたいな人だと
認識していた。
「いまからいってみようか」
と、りょうちゃん。
「ちかいの?」
「うん。すぐちかく」
「じゃあ、いこう」
かずおは何も言わなかったが。
僕たち3人は、
自転車にまたがり、
「おにいちゃん」の家へと出発した。
何も考えず、軽い気持ちで、
うきうきとわくわくだけを持って、
僕らはおしゃべりしながら、
楽しげにペダルを漕ぎ続けた。
* *
「りょうちゃん。
おにいちゃんの家って、
どこにあるの?」
国道を走りながら、僕は、
りょうちゃんに尋ねた。
「カステラにある」
「カステラ?」
「うん。カステラ」
「カステラって、
あのカステラ?」
僕は、おやつなどに出てくる、
茶色と黄色の、
ザラメがついてふわふわとした、
あの「カステラ」を思い描いた。
「カステラにすんでる」
「町の名まえ?」
「うん、そう。
まちのなまえ」
りょうちゃんは、
「すべりだい」のことを
「すれびだい」と言ったり、
「エレベーター」のことを
「エベレーター」と言ったりする。
カステラのおにいちゃんの
家への旅路——。
家の場所を知っているのは、
りょうちゃんだけだ。
りょうちゃんだけが、頼りだった。
何の迷いも躊躇もなく、
自信満々に
がんがんペダルを漕ぎ続ける
りょうちゃんんを追って、
僕とかずおは、
自転車を走らせていった。
気づくと見知らぬ景色ばかりになり、
大きな川を越えて、
ごみごみした界隈にまで来ていた。
真っ青な空には太陽がきらめき、
車の窓ガラスやビルの壁を
きらきらとまぶしく輝かせていた。
車やトラックが行き交う、
三車線の国道。
ここが学区外というだけでなく、
となりの区だということなど、
その時の僕たちには
知る由もなかった。
「あれぇ・・・」
大通りから小道に入ると、
りょうちゃんが自転車を止めた。
「ここ、どこ?」
「えええっ!」
僕は驚きの声をあげた。
かずおは何も言わなかった。
ただ黙って、僕らの後ろにいた。
「りょうちゃん、わからないの?」
知ってると思っていた。
わかっていると思っていた。
その上でがんがん
走っているとばかりに思っていた。
その自信は、いったいどこから
来ていたものなのか・・・。
「りょうちゃん、
道、わからないの?」
「わかんない」
「じゃあ、
どうしてこっちにきたの?」
「じどうしゃできたとき、
こっちのほうにくるから。
こっちのほうだってわかるけど、
どこなのかはわからない」
りょうちゃんが、
困ったような顔をした。
「おにいちゃんのうちは、
どこなの?」
「どこかはわかんない」
「りょうちゃんがわからなかったら、
ぼくたちわかんないよ」
「ええぇっ!
・・・・どうしよう」
りょうちゃんは、
ものすごくびっくりした顔だった。
「だれかにきいてみよう」
僕たちは、
ガソリンスタンドのおじさんに
聞いてみた。
「おにいちゃんの
うちにいきたい」
おじさんはりょうちゃんに、
「おにいちゃん」の名前を聞いた。
「▲▲にいちゃん」
りょうちゃんは、
下の名前しか知らなかった。
おにいちゃんの、
名字を知らなかったのである。
今思って見てみても、
こういうことはよくある。
「しんにいちゃん」などと
愛称で呼んでいるせいで、
名字という「概念」を持たないまま
「しんにいちゃん」は
「しんにいちゃん」という存在だと思い、
名字を知らぬまま、
愛称で呼び続けていたことは
自分にもある。
下の名前だけ聞いても
もわからない、と。
ガソリンスタンドのおじさんは
首を傾げた。
住所はどこかと聞かれて、
りょうちゃんが答えた。
「カステラ」
「・・・カステラ?」
「カステラ」
僕が聞いた時と
そっくりそのまま同じ感じで、
おじさんが眉をひそめる。
「・・・もう、いこ」
おじさんの口調が、
怒っているふうにでも
聞こえたのか。
りょうちゃんは、
小声でささやき、僕の腕を引いた。
お礼もそこそこに、
自転車を漕いで立ち去る僕らへ、
おじさんが心配そうな顔を向ける。
かずおは何も言わなかった。
カソリンスタンドに
背を向けた僕たちは、
引き返すのではなく、
そのまま知らない景色の中へと
自転車を走らせた。
しばらく走ると、
お菓子なども売っている、
パン屋さんがあった。
店先には、
優しそうなおばさんが座っている。
「おばさんにきいてみよう」
僕らはまた、聞いてみた。
頼みの綱のりょうちゃんが、
同じようにして口火を切る。
「カステラにいきたい」
りょうちゃんは、敬語を知らない。
僕もそんなには知らなかったが。
ぶっきらぼうな
りょうちゃんの物言いは、
おばさんをますます混乱させた。
「え? 何?
カステラがほしいの?」
「ちがう。カステラ。
カステラにいきたい」
「カステラ?」
「カステラ」
しばらく黙ったおばさんは、
ややあって大きく頷いた。
「ああ、カサデラ?」
僕らの住む街には、
「笠寺(かさでら)」という
地名がある。
電車の駅名にもなっていて、
その名前は僕にも覚えがあった。
「なんだ、かさでらかぁ」
と言ってみたものの。
僕にはそれがどこにあるのか、
まったくくわからなかった。
笠寺は、もう目と鼻の先、
もうちょっと行ったところの、
すぐそばにあるとのことだった。
「あんたたち、
どこから来たの?
何小学校の子?」
僕たちが答えると、
おばさんは驚いた顔で
目を丸くした。
「自転車で来たの?
まあぁ・・・
そんな遠いところからわざわざ。
何しに行くの?」
「おにいちゃんのうちにいく」
「笠寺のどこなの?」
「わかんない」
「わかんないって。
それじゃあ、
行きようがないじゃないの?」
空はまだ明るかったが。
もうすぐ暗くなるから帰りなさいと。
そんなようなことを
おばさんに言われた。
あそこの道を
まっすぐ行けばいいっからと。
わからなくなったら人に聞きなさいと。
そんなことを言われた気もするが。
おばさんに見送られ、
僕らは黙って自転車に乗った。
かずおは、
何も言わないままだった。
* * *
秋の空はつるべ落とし、
などとは言うけれど。
黄色い光をたたえた太陽が、
空を赤く染め上げたかと思うと、
あっという間に
あたりが真っ暗になった。
街灯がともり、
国道には車のライトが
川みたいに流れる。
「こっちでいいのかなぁ。
ずっとまっすぐいけばいいって
いってたよね」
僕の言葉に、
返事はなかった。
りょうちゃんは押し黙ったまま、
今にも泣き出しそうな顔を、
じっとアスファルトの地面に
向けていた。
信号待ちのたびに、
話しかけるのだけれど。
りょうちゃんは黙ったままだった。
かずおもずっと黙ったままだった。
僕らは半ズボンだった。
寒さは心細さをあおり、
自信のない足取りを
いっそうに不安にさせた。
パチンコ店のネオンがまぶしい。
明るいはずの光が、
なぜかよけいに夜を感じさせた。
光に群がる、
ピーナツみたいな色をした蛾が、
すごく気持ち悪くて、
迷子の僕らを
ちらちらと嘲笑っているかの
ようだった。
いつしか僕らは、
自転車を降りて、
とぼとぼ押して歩いていた。
車が走去るたび、
りょうちゃんの半ズボンの足を、
自転車を、真っ白に照らし出し、
またすぐに闇が
りょうちゃんの姿を
夜の中へと飲み込んだ。
一歩遅れて歩くかずおは、
何も言わなかった。
ただ黙って、
二人のうしろを歩いていた。
「もう、
かえれないかもしれない」
りょうちゃんが言った。
「もうずっと、
うちにかえれないかもしれない」
あの車かっこいいね、とか。
もうすぐつくかな、とか。
なるべく明るく
ふるまっていたのだけれど。
ついにりょうちゃんが
泣き出した。
自分が
自衛隊のお兄ちゃんのところに
行こうなんて言わなければ、
こんなことにはならなかったと。
りょうちゃんは、
昼間の自分を、
心の底から悔いていた。
「だいじょうぶだよ、
ぜったいかえれるよ」
何の裏づけもない励ましは、
単なる頼りない励ましで、
気休めにすらならず、
泣き濡れるりょうちゃんを
安心させる力はなかった。
白々とした街灯の灯る街道に、
あたたかな色の明かりが見えた。
一軒の駄菓子屋さんだった。
当然と言えば当然のことだが。
学区内でよく行く店とはまた違う、
見たことのない駄菓子屋さんだった。
軒先の緑色のテントが、
白熱灯に照らされて、
冷え冷えとした夜の景色の中、
そこだけあたたかな色に
染まっていた。
光を求める羽虫のように。
僕らの足は——
少なとも、僕の心は、
まっすぐにそちらへ向かっていた。
そこは、駄菓子屋というより、
駄菓子を多く扱う、食品店だった。
コンビニエンスストアが
まだ少なかった時代、
このスタイルのパン屋、食品店、
または「よろずや」的なお店は、
たくさんあった。
店構えは、
住宅と一体化しており、
店の奥と2階は住居だった。
ということもあり。
暗くなってもなお、
店を開けている店舗も少なくなかった。
消沈したりょうちゃんを
元気づけたくて。
僕は、明るい調子で誘ってみた。
「ちょっとよっていこうよ」
りょうちゃんは、
消え入りそうな声で、こう答えた。
「おかねがない」
「ぼくもない」
かずおが言った。
「じゃあ、
50円ずつあげるから、
なんかかってこうよ」
二人が何を買ったのかは忘れたが。
僕は、店先にあった、
『コスモス』と書かれた
緑色のガチャガチャと向き合った。
『トントンダイス』
人差し指の
第一関節くらいの大きさの、
うすだいだい色の
ゴムでできた、二匹の豚。
豚が二匹で、
豚豚(トントン)。
二匹の豚を、
サイコロみたいに転がして、
「運勢」を占うという物だった。
この期におよんで、
なぜにそんな代物へと
手を伸ばしたのか。
今となっては、
当時の自分の心理を
うかがい知ることはできないが。
「おもしろそう」
そう思ったことだけは、確かだった。
50円玉を入れて、
ガチャガチャと回す。
回しきった手応えに、
コトン、という音が続く。
緊張の瞬間。
当たり、だった。
透明なカプセルの中で、
二匹の豚が、笑っていた。
「やった、でた!」
さっそく
カプセルを開けて見てみると、
付属の紙に、二匹の豚が示す
いろいろな姿が描かれていた。
詳細は忘れたが。
二匹とも仰向けなら
「ざんねん」とか。
二匹両方ともが立ったら
「大吉」みたいに。
横向きに倒れた姿勢だったり、
顔を下にした姿勢で
逆立ちみたいな格好だったり。
二匹の豚の姿勢の組み合わせで
設定された運勢が、
折りたたまれた小さな紙面に、
単色刷りでびっしりと、
図解とともに明記されていた。
試しに転がしてみる。
コンクリートの地面だと
買ったばかりの豚ちゃんが
汚れそうだったので、
自転車のサドル(椅子)の上に、
左手で囲いを作って、
加減しながら小さく転がしてみた。
うっすらとした記憶では。
目の前に転がった
二匹の豚が示す運勢が何なのか、
判別しにくい組み合わせだったように
覚えている。
続けて何度か転がしてみる。
けれど。
よく、わからなかった。
よしとばかりに、
地面で転がしてみる。
どうしよう。
思ったより、おもしろくない。
全然、おもしろくなかった。
何度か転がせばおもしろくなるはず、
とばかりに、むきになって、
何度も転がしてみる。
けれども・・・。
おもしろくは、ならなかった。
おもしろくなるどころか、
僕の感情の針は、
どんどんゆっくりと
真逆のほうへと振れはじめた。
興奮の絶頂点は、おそらく、
カプセルを開ける瞬間に迎え、
刹那に燃え尽き、
すっかり冷たい骸(むくろ)と
化してしまっていたようだ。
それでも。
笑う二匹の豚は、かわいかった。
白熱灯の、
オレンジがかった光に照らされた、
二匹の豚。
りょうちゃんの自転車の
泥よけに描かれた、
アメリカンフットボールをする
男性の絵図(イラスト)とともに。
あたたかな光に包まれた豚の姿が、
言いようもないほど鮮明に、
僕の目の奥、心の底に、
くっきりと深く焼きついた。
「もういこうよ」
駄菓子屋さんの壁掛け時計は、
6時過ぎを指していた。
りょうちゃんの声が聞こえなければ、
僕はずっと、放心したまま、
二匹の豚を
転がし続けていたかもしれない。
暗い坂道を下り、
踏切を越えると、
見慣れた景色が現れた。
家の前の道につながる
国道だった。
安堵のあまり、
全身から力が抜けそうになった。
自転車のハンドルを投げ出して、
今にも駆け出したい気持ちを
懸命にこらえ、
こみ上げる喜びの笑みを
奥歯で噛みしめた。
「じゃあね」
いちばん最初に
手を挙げたのは、僕だった。
学区のいちばん端に
家がある僕は、
いちばん最初に二人と別れた。
「バイバイ」
りょうちゃんが手を振った。
かずおは何も言わなかった。
ただ、少し笑っていた。
二人と別れた僕は、
急いで自転車にまたがり、
勢いあまって踏みそこね、
回転してきたペダルで
したたかに脛(すね)を強打して
顔をしかめながらも、
はちきれんばかりの笑顔に風を浴びて、
夜の道をぐんぐん進んでいった。
その、
たった数十メートルの道のりが、
どんなに遠く長く、
はてしなく感じたことか。
息を吸うのも、
まばたきするも忘れて、
ひたすら自転車を漕いで走った。
体よりも、
気持ちのほうがずっと前を走っていた。
家の、灯りが見えた。
オレンジ色の、カラスごしの光。
あたたかい色の、丸い光。
光の輪の中に、
赤茶色のレンガの壁が見える。
車庫を抜け、
階段を駆け上がり、
玄関の扉を勢いよく開けた。
その時、
わが家の匂いを、
嗅いだ気がする。
「ただいま!」
「おかえり。
遅かったねぇ」
家に着いた時間は、
いつもよりほんの15分か
30分ほど遅くなったくらいだったが。
その時の僕には、
真っ暗な、夜の夜更けに感じた。
いつもと変わらぬ
おだやかな母の声に、
喜びよりも安堵が広がり、
いつもと変わらぬその顔に、
遅れて悔しさが湧き上がった。
「もう・・・!
ただいまなのに・・・・!」
口をついて出たのは、
そんな感じの言葉だった。
すごく怖くて、不安で、
悲しくて、頑張って、こらえて、
やっとの思いで家に帰ってきたのに。
目の前の母は、
僕の「苦労」など
まるで知らない顔つきだった。
自分の味わってきた
心細さやつらさが伝わらず、
けろりとした母が恨めしく思われ、
これまでにないほど
大きな声で泣きじゃくった。
「どうしたの、そんなに泣いて。
何、どうかしたの?!」
母かうろたえる。
母の胸にすがって、僕は、
今日の出来事を、ここまでの苦労を、
八つ当たりするみたいに
涙まじりで訴えた。
今ごろ、りょうちゃんも、
泣いているのだろうか。
かずおは、
泣いているのだろうか。
のちに知ったことだが。
かずおの家には、
誰もいないことが多く、
夜、寝るまで母が
帰らないこともあるとのことだった。
鍵っ子のかずおは、
家に一人でいる時間が多かった。
道中で泣き出した、りょうちゃん。
家に帰って、泣きじゃくった僕。
何も言わず、静かに微笑んでいたかずお。
はたして誰がいちばん泣き虫で、
誰がいちばんしっかり者か。
大きくなった今でも、
それはわからない。
人前で涙を
見せないようにしていた僕が、
本当の意味で強いとも思えない。
素直なりょうちゃんが、
弱虫だとも思えない。
記憶の中で微笑むかずおは、
何も言わない。
今はもう、
なくなってしまった駄菓子屋だが。
その道を通るたびに思い出す。
カステラのおにいちゃんと薬莢と、
笑う二匹の豚を。
迷子になっても、帰る家がある。
帰れる場所がある。
『いくつになっても甘えん坊』
そんな言葉もあるけれど。
いくつになっても泣き虫の僕は、
今日もえんえん泣きながら、
まっすぐ家に帰るのでした。
< 今日の言葉 >
クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット
(タイ王国の正式名称)





