#32






はっ、ここは。


無自覚で堕(お)ちた眠りは、
ベッドの上ではなかった。


東へ向かう夜行バス。

煌々(こうこう)と輝く、
街の明かりが近づいてくる。


「ついに来たんだな」


期待と不安に胸を膨らませ、
A男は「都会」へと向かうのだった。