「本当にすみませんでしたっ」
勢よく土下座するA男の耳に、
何やら裂けるような音が聞こえた。
A男のズボンの、
尻の部分が破れた音であった。
「お尻が破れてる!」
指を差して笑う駅員。
「本当だ! おケツ丸出しだ!」
小さな笑いが連鎖して、
雪だるま式に大きくなると、
やがで決壊したような笑いが暴発した。
駅員室に笑い声がこだまする。
「土下座でおケツ丸出しだって」
涙目の駅員が
A男の肩をパンパンとたたく。
気づくとその場の全員が、
腹を抱えて笑っていた。
「もう二度とこんな
バカな真似するんじゃないぞ」
そう言いながらも、
真面目になればなるほどおかしくて、
みな思い出したかのように
笑いをもよおした。
「シリません、なんて、
もう言わせないぞ」
「あははは。そうだそうだ」
「本当に見事なケツ末だ」
みな、どうしてここに集まったのか
その理由を忘れそうになりながら、
申しわけなさげに頭をかくA男を取り囲んで、
いつまでも愉快に
笑いつづけるのでありました。
めでたし めでたし