#3

 


何と!

100円玉かと思われたそれは、
車に踏みつぶされたジュースのフタだった。


「ふぅ、あぶねぇぜ・・」


あたかもハードボイルドの
主役のような大仰さで、
かいてもいない額の汗を拭う。

と、


「わんわんわんわん!」


けたたましく
まくし立てる小型犬に驚き、
スーパー入口前のワゴン販売店で買った
やきとり(鶏皮2本:塩とタレ)を
すっかり落としてしまう。

「あっ」

という声もむなしく、
何の躊躇(ちゅうちょ)もなく食らいつき、
大事なやきとりを平らげようとする小型犬に、


「こら、やめろ! こいつ!
 俺のやきとりっ! こらっ!
 やめろって言うのがわかんないのか!」


と大声で罵しるも、
勢いをゆるめない犬に向かって、


「いくら犬好きの俺でも
 こればっかりは許せん」


と、くわえて放さない串に手をやり、
小型犬相手にミニ綱引き大会を開催。

スーパーの駐輪場わきの路上にて、
低い声でうなり声を上げる小型犬と
五分五分の勝負を繰り広げるA男だった。


(ライフ:−2ポイント