何と!
100円玉かと思われたそれは、
車に踏みつぶされたジュースのフタだった。
「ふぅ、あぶねぇぜ・・」
あたかもハードボイルドの
主役のような大仰さで、
かいてもいない額の汗を拭う。
と、
「わんわんわんわん!」
けたたましく
まくし立てる小型犬に驚き、
スーパー入口前のワゴン販売店で買った
やきとり(鶏皮2本:塩とタレ)を
すっかり落としてしまう。
「あっ」
という声もむなしく、
何の躊躇(ちゅうちょ)もなく食らいつき、
大事なやきとりを平らげようとする小型犬に、
「こら、やめろ! こいつ!
俺のやきとりっ! こらっ!
やめろって言うのがわかんないのか!」
と大声で罵しるも、
勢いをゆるめない犬に向かって、
「いくら犬好きの俺でも
こればっかりは許せん」
と、くわえて放さない串に手をやり、
小型犬相手にミニ綱引き大会を開催。
スーパーの駐輪場わきの路上にて、
低い声でうなり声を上げる小型犬と
五分五分の勝負を繰り広げるA男だった。
(ライフ:−2ポイント)