2008/09/01

偶然の風



友人と二人、晩ごはんを食べたあとのことだ。


デザートやアルコールを買うため、
「コンビニ寄って行こう」という話になった。

その道すがら、
何となくスーパーマーケットに行きたくなり、
24時間営業のスーパーマーケットに行き先を変えた。

普段は深夜の、遅い時間に行くことの多い店だが。
このときは、まだ22時前だったせいもあり、
客層も、商品の種類も、いつもとは少し違っていた。



そんななか、
デザートコーナーに見なれない「はりだし」があった。



「はりだし」。


特設の台に、お勧めの商品や
売りたい商品が陳列された、あれだ。



まさにその「はりだし」が、
デザートコーナーの通路に「はりだして」いるではないか。
はたと足を止め、台の上に並んだ商品に目を向ける。

と、そこには、
初めてお見受けする商品が並んでいた。
普段からスーパーマーケット・ウォッチャーの
僕にとっては、捨て置けないことだ。



牛乳瓶に入れられた、酪農系のプリン。
僕は、すぐ手に取った。
ひとめぼれだった。



北海道、生田原。
ノルディックファーム、
オホーツク牛乳の塩キャラメルプリン/90ml。

ほかの味には目もくれず、
まよわず塩キャラメル味をカゴに入れた。



「今夜のデザート」だけにとどまらず。
何の確証も裏づけもないのに、
「おみやげ」と称してもう1個ずつ、
よぶんに買って帰ることにした。

もう、気分は「おプリン」で、
おプリンしか見えなくなっている僕の横で。
友人は冷静にも、
棚の上に専用スプーンがあることに気づき、
個数分だけ切り取ってくれた。



300円という値段が、
特売なのか、定価なのか。

何の予備知識もなく、
どういう扱いで売られているのかも分からなかったが。
ひんやりと並んだそのプリンたちが、
僕らを「呼んで」いたのだ。



さて、その味はというと。

うまかった。
笑いがこぼれるほどうまかった。

うまいとしか言いようがないうまさに、
危うく「おみやげ」にまで手をつけるところだった。



さらに言えば、そのスプーン。
マドラーのように細く長く、
プリンをすくう「シャベル」の部分の
角度も「丸み」も絶妙だった。

牛乳瓶にぴったり合った形状、
そして口当たりのよさ。
既存のものなのか、
はたまた自社開発のスプーンなのか。
使い心地の完璧なスプーンは、
まさしく『パーフェクト・スプーン』だった。


脳科学者の茂木健一郎氏が言っていた。

「直感」というのは、
安易で、短絡的な決めつけではなく、
何百、何千という経験や情報を、
瞬時に頭の中で処理して
はじき出された「こたえ」なのだと。

言い方を変えれば、直感(ひらめき)は、
何百、何千もの論理に匹敵する場合があるということだ。



プリン選びの決め手を、
あとになって分析してみると、
たしかにいくつか思い当たる。

「牛乳瓶は、なめらかプリンづくりに最適」

「表面の固まり具合」

「デザインから伝わる実直さ、真摯な感じ」・・・等々。

けれど、そんないくつもの「手がかり」は、
食べ終わるときまで、
あえて言語化して考えなかった事柄だ。


「Don't  think, feel」


ブルース・リーの代名詞ともいえる、有名な言葉だが。
頭で「分かって」いても、なかなかそうはいかない。



直感というものは、
使ったぶんだけ磨かれるような気がしないでもない。
直感を頼りに行動すれば、
感覚が、どんどん鋭く研ぎすまされていくのではないか。


少し大げさな表現かもしれないけれど。
このプリンには、
いくつもの偶然が重なって、出会うことができた。

もし、この日に
友人と晩ごはんを食べに出かけなかったら。


2軒目ではなく、
1軒目にのぞいた店に入っていたら。

スーパーではなく、コンビニに寄っていたら・・・と。

こじつけて考えだしたらきりがないけれど。
とにかく、この「偶然の出会い」に感謝したい。


「一日は、ものすごい数の偶然が集まってできている」


そんなふうに言った人が、いたとか、いないとか。



予約。保証。事前情報。

せっかくの「偶然」を減らすのは、
もったいない気がする。

偶然ばかりじゃ頼りないけれど。
偶然のない人生なんて、風のない海原のようなものだ。

けっきょく、スクリューやオールで
「必然的に」進んでいくしかないのだからね。



「点」と「点」を結ぶだけじゃなく、
そのあいだにある「偶然」を楽しみたい。


ほんのささやかな、
小さな偶然を、取りこぼさずに拾い集めていく日々。

偶然の風を、いつでも肌に感じられるよう。
感覚の薄着を心がけたいものですね。



< 今日の言葉 >

「のび太」。野比のび太! いい名だろ。
すこやかに大きく、
どこまでも のびてほしいという
ねがいをこめた名まえだよ。

(ドラえもん第2巻「ぼくの生まれた日」より)

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