#21







「道、どっちですか?」

傘を開きながら、A男が尋ねる。


「私は、こっちなんですけど」


「ああ、よかった。
 ぼくもそっち方面です」


「すごい、偶然ですね」


「今まで会わなかったのが
 不思議なくらいですね」


A男のその言葉は、
水しぶきを跳ね上げる
トラックの音にかき消された。


聞き返す彼女に言葉を濁し、
折りたたみの傘を広げる。


「それじゃ、おじゃまします」


せまい傘の中。
どうしても肩を寄せ合う格好になる。


道を渡れば、ホテル街。


どうする?