2015/10/19

ありがとう、家原美術館2015〜回想録・其の2









岐阜市内にて開催いたしました、
《家原美術館2015》。


早いもので、閉館から1カ月が経ちました。




ふり返るともうずいぶん前の、

はるか昔の出来事のようにも感じますが。

思い返すとつい昨日のことように、

色あざやかな風景がよみがえってきます。



さて、先回お送りいたしました、

『ありがとう、家原美術館2015〜回想録・其の1』


お待たせいたしました。


この期におよんで、

『〜其の2』をお送りする機会がやってきました。



世間ではもうすっかり

忘れ去られてしまった、過去の出来事かもしれません。


が、それでもかまいません。

私は負けません。

贅沢しません、勝つまでは。



そんなわけで、

《家原美術館2015〜回想録・其の2》、

どうぞごゆるりとご賞味ください。


※今回もまた長きにわたる絵巻となることが予想されますので、
 おかしや飲み物、クッション等、準備のほどをよろしくお願いいたします。







6月14日(日)晴れ時々曇り <49日目>



所シェフの講演会に行く。

料理店のシェフご夫妻と3人で。


聞いていてたのしいうえに、すごく勉強になった。

90分があっという間だった。

まさに、プリンのごとき濃厚な時間。



講演会終了後、

いただいたプリンを河原でいただく。

空の青、山の深緑、草の若緑。

向こうから金八先生が歩いてきそうなほど

平和的な風景のなかで、

シェフご夫妻といっしょにプリンを味わう。



そのあと、長女ちゃんも合流し、

75歳の大将が営む中華料理店へ。


窓ガラスから差し込む、

オレンジがかった西日に切り取られた大将のシルエット。

ゆったりとした動きではあっても、

まるで動きに無駄がない。

手数が少なく、的確な、

熟練の手さばき。

そんな大将の料理は、

味にも、まったく雑味がなかった。




6月15日(月)晴れ <50日目>








イギリス、マルドンの塩と、

フランス、ゲランドの塩。


全粒粉のパンに合うのは、ゲランドの塩。

マルドンの塩は、生野菜に合う。















6月16日(火)曇り <51日目>



涼しい朝。

『激辛ピリカレー』(スナック菓子)の暴力的な辛さ。


左壁、右壁。

肩がこって大変だった。

























6月17日(水)晴れ <52日目>







6月18日(木)曇り時々雨 <53日目>



白ペンキが少なくなってきた。

3㎏くらい買おうか。



























「制作の 合間の癒し わんこチョコ」






6月19日(金)曇りのち雨 <54日目>



コーヒーのない朝。

野菜ジュースがおいしかった。


白ペンキ3㎏を注文。












一時帰宅。

着くころに雨があがっていて、

空いっぱいに大きな虹がかかっていた。






★ ★





6月23日(火)晴れのち雨 <55日目>



ちょっと夏めいた日。

スーパーに寄って13:00着。

白ペンキ3㎏、追加。


左、グリーン。

長い、道のり。


空から響く、鈍い音。

花火かと思ってあわてて屋上に行ったら、雷だった。


また音がしたと思ったら、

こんどこそ花火で、

屋上に行ったら雨が降っていた。






















タバコ屋さんには羽虫がいっぱい集まっていて、

おばさんが、


「すぐ近くに街灯が新しくできたから、

 虫が集まってくる」


と言っていた。


「扇風機を点けたら」と、言うと、


「それはいい考えね、そうしてみるわ」


と、ほほえんでいた。





6月24日(水)晴れ <56日目>



昨日は23:00すぎに寝た。

よく眠って8:25ごろ起きあがる。

10:00、開始。



















色のちがい、調色、手直しのむずかしさ。



「できたところを眺める」


まだ描いていない箇所ばかりに目を向けず、

描いたところに目を向けて、

成果を見つめる。



左上、若緑色に苦労した。

いい色になるまで3回塗り直した。

重ね塗りも合わせると、6、7回は同じ形をなぞった。






6月25日(木)曇りのち雨 <57日目>

















左部分が完了。

すきまが埋まった。

ひとつの山を越えた感じ。


まだ先の道のりは長いけれど。

少しずつ埋まっていく色と形に、

一歩、また一歩と進んでいることを実感。





6月26日(金)雨 <58日目>



大雨。どしゃ降り。

あまりの雨に、笑いがこぼれる。































6月27日(土)曇り <59日目>



静かな朝。

土曜日の感じがしない。

とはいえ、いつもあまり人の気配がしない。
























県美の打合せのため帰宅。

















★ ★ ★





7月1日(水)雨のち曇り <60日目>



「セザンヌ」

「え、スザンヌ?」





7月2日(木)晴れ <61日目>



さわやかな快晴。


「早く起きて出かけないと」


と思ったが、

もうここが現場だった。


どこで寝たのか、

どこで寝ているのか、

ときどき分からなくなることがある昨今。































7月3日(金)晴れ <62日目>



清らかさ。

濁らない、白紙。無。


脚立の上でバランスを崩してこらえたときに、

右腕に力が入って、筆のピンクが飛び散った。

きれいな斑点が壁にできたけど、

急いでぞうきんで拭き取った。














屋上で一服。


金華山の稜線(ライン)。











7月4日(土)曇りのち雨 <63日目>



8:25起床。


朝、目覚めると、

布団カバーを着ている現状。


カバーのひもがなくて外れやすいせいで、

起きると布団カバーをまとっている。



天井がつづいて首がつらい。

肩とふくらはぎもパンパンに。


あたたかい汗が額、首筋を伝う。














雨が降ってきた。


外は涼しくても、天井付近は暑い。


それでも集中力高くできた。




天井ばかり、上を見てばかりの1日。

明日からも天井DAYS。







7月5日(日)曇り <64日目>














昨晩、左脚ふくらはぎと右腕がつった。



昨日、描き終えたあと、

描いている部屋を見て回った。


いつも見ている角度とちがった景色、

見え方に感動を覚えた。


そして思った。

いい感じにやれていると。









7月6日(月)曇り <65日目>












































<天井部分について考えてみる、の図>






7月7日(火)雨 <66日目>


おりひめ、ひこぼし。


山田珈琲さんにいただいた

コーヒーを淹れる。

そして口に運んでみる。

香りのちがいは歴然。


味は、というと、

あぶない味がした。


ひと口、味見するつもりが

すぐにまた次のひと口を誘い、

あと味の広さ、深さに感覚がくすぐられる。


透明で奥行きのある、特別なコーヒー。

とにかく、困ってしまうくらい、

とてもおいしく感じた。


ひとことでは言い表わせない複雑な旨さ。

なるほど、これが「深み」というものか。


コーヒーの旨さに魅了され、

のんびりの朝。








朝食は、フィリピン食材店で買ったパン。
見た目はキュートでも、食べごたえはどっしり。




同じくフィリピン食材店で買ったケーキ。
カスタードクリームとココナッツスライスがたまらないです。





デザートには、所シェフにいただいたスイーツを。
もちろん、いっぺんにではなく、ひとつずつ。
















7月8日(水)曇りのち雨 <67日目>



ペンキを使いはじめて53日目。
























岐阜の友人と食事をしたあと、

公園でおしゃべり。

ベンチに座ってしゃべっていたら、

雨が降ってきたので、

屋根のあるベンチへ移動。


おそろしく強まった雨に、

しばし「閉じこめられた」ような状態になる。


とはいえ、雨とは関係なく、

他愛のない話に花を咲かせて、

気づけば午前1:00すぎ。


雨も、あがった。


すぐそばで眠る、野良猫の寝息。

遊び回る、仔猫たち。

ぽつぽつ人が通る、公園での夜。


高校生のころのような夜だった。

















7月9日(木)曇り <68日目>



夜中に雨が強く降る日々。

8:35起床。

蒸し暑い朝。







意地と気力と体力の闘い。


ほとんど天井の9日間。


右腕が上がりづらかったけれど、

線はいい線が描けた。






































































つまずいてペンキを床にこぼした。


根性。







今回の仕事はここまでに。


現場を出るとき、お隣りのご婦人に、


「旅行ですか?」


と聞かれる。


カートを引くその姿のせいか。

説明するのもややこしいので、

そんなものです、と笑って応えると、


「ハワイですか?」


と言われた。

花柄シャツに、だぼだぼズボンのせいなのか。

もしハワイに行くとしたら、

はしゃぎすぎな、自分の私服。









★ ★ ★ ★




7月13日(月)晴れ <69日目>



夏がやってきた。


郵便局に、はがきを出しにいく。


昨日書いた、113枚。

夏らしい、貝がらの切手を貼ってくれるとのことで、

ちょっとうれしく思った。


郵便局は、クーラーが効いていて涼しい。




天井を描くの図(イメージ)


































ぽたぽたと垂れ落ちる滴が、

ペンキなのか汗なのか。

止まらない汗。



16:15。

ひとまず、大きな流れでの天井が終わった。



ちょっとだけ、じぃんときた。



埋まったという実感を「定位置」から味わった。


あとは、床だ。




<床部分について考えてみる、の図>





7月14日(火)晴れ <70日目>



昨日は制作中の熱が冷めなかったのか、

1日じゅう熱が冷めなかった。

夜もなかなか体が冷めず、

真夜中に屋上で一服。


建物自体が熱を帯び、

3階とかの上階へ行くと、

もわもわとしていた。



屋上に水をまく。


建物も涼しげな顔つきに見えた。



8:10起床。

夏という感じの朝。


昨日から扇風機の登場。


あまりの暑さに思考が停止。








モーローマン。

意識モーローマンに変身。


夜はお食事に誘われて、

ごちそうをいただいた。


生ビールがものすごくおいしかった。





7月15日(水)晴れのち雨 <71日目>



快晴。

夏休みみたいな朝。


蝉しぐれ。


7:00に目が開いた。


今日も暑くなりそうだ。














午後、スコールのような雨が

いきなり降ってきた。


30分くらい降って、またあがった。



夕方、また激しく降ってきた。


外に出て、柳ヶ瀬のほうに行くと、

アーケードの屋根を叩く雨音で何も聞こえないくらいだった。


屋根のない「外界」は、

雨のカーテンを下ろしたようで、

視界が遮られていた。



赤ペンキ1㎏、黄ペンキ1㎏追加。














濡れた服を脱いで

パンツ1枚で窓を閉めに行くと、

階下の路上から見上げる

フィリピン人女性2人組と目が合って気まずかった。



<ここが痛い/天井と床とのちがい、の図>




7月16日(木)雨 <72日目>



台風の噂は聞いていたけれど。

朝からかなりの風雨だった。


斜め35度に降る雨。














残すところあと1本。





19:00。

床の割れ板を修繕。

板の設置。






作業前に道具をそろえておくこと。
(こどもじゃないんだから





7月17日(金)雨 <73日目>



台風の影響で風が強く、

雨がぱらつく朝。

8:25起床。


台風11号「ナンカー」。

マレーシア語の、果物の名前。

(和名:パラミツ/波羅蜜)



どんより鈍い色の空。

雨と風が、出たり引っ込んだり。


午前中、ものすごく蒸し暑くて、

滴る汗が止まらなかった。









17:35。



完成。



タバコを吸いながら眺めてみる。

感慨深いものがある。



長かった、というより、

たくさん描いたな、と思った。



ちょっとだけ、うるっときた。





























マスキングもはがしてみた。

久しぶりにあらわになった地肌。

こんなふうだったか、と思った。














22:30。

押入れ部分に上がり込み、

しゃがみこんだ格好で照明を設置していたとき。


パンッ! という破裂音とともに、

目の前で青白い閃光が炸裂した。



配線していたコードが断線し、

ショートしたらしい。



いきなりの破裂音と青白い閃光に、

「蹲踞(そんきょ)」の姿勢のまま

思わず体を後ろに逃がし、

壁面を背中で受け止めるような形になった。



危なかった。


裸足だし、半袖だし。



あまりに激しい閃光で、

白っぽくて緑で赤いモヤモヤ残像に、

しばらく視界が支配されていた。



「・・・びっ、くりしたぁ」



思わず声を上げるほどの驚きに、

遅れてじわじわ笑いがこみ上げた。





7月18日(土)雨 <74日目>













しとしととしつこく降る雨。

昨夜からずっと降りつづけている。


8:40起床。

連日の短睡眠で、ちょっと「寝坊」してみた。



3階の雨受けに、

バケツ9杯分の雨水がたまっていた。





























































































14:10。

照明のための配線終了。



蝉が鳴いて、外は晴れつつある。


片づけをして帰宅。


帰りの電車は、

途中で記憶が途切れた。

前置きもなく、いきなり眠りに堕ちていた。


窓外を流れる地元の風景が

妙になつかしく映り、

大げさなようだけど、

1年か半年ぶりくらいに感じた。





★ ☆ ★ ☆ ★





さて。


何のひねりもなくお送りいたしました、

この『家原美術館2015〜回想録・其の2』ですが。


いかがだったでしょうか。


今回、制作風景のすべてを

語り尽くす勢いで挑んだのですが。

またしても語りきれずに

お別れのお時間がきてしまいました。



会場を描きあげたところで

ひと区切りとさせていただいて。


あとほんの少し、

絵が飾られるまでの模様はこの次、

ということにさせてはいただけないでしょうか。



ここまで忍耐強く通読していただけた

あなたでありますから。


この先も、

やわらかな毛布のごとき温度で

包み込んでいただけることと信じておりますゆえ、

どうぞ続編にご期待くださいませ。




それでは、また。




長いお時間、

読んでいただきありがとうございました。


いや、これは本当です。




この「無駄」な時間が、

みなさまの栄養となりますように。



でわ!



※下の写真は、会場屋上で撮影した(宇宙的な)深夜の風景です。








< 今日の言葉 >


『最初のころに』と言われると、ぼくの頭のなかでは、
『最初のコロニー』というふうに変換されて、
 話もそっちのけで、気持ちははるか宇宙に旅立ってしまうのです。

(こまったぼくの性質/家原利明)