2013/12/30

うめやの大将






2013年。

思えば6月ごろから展覧会の準備で奔走し、

何やかんやで今日まで

ずっと走り回っていたような。

そんな印象の1年だった。



たぶん、2012年も

同じような感じだった気がする。


忙しいのとはまたちがい、

やることがたくさんあるということ。

それは、ありがたいことです。



「忙しいというのは『心』を『亡くす』こと」


そんなふうに聞いたことがある。


たしかに。


「忙しい」と思っていると、

よゆうがなくなって、

見えるものも見えなくなって、

感じられるものも感じられなくなってしまう。


忙しくならないように。

そう心がけながらすごした1年だけれど。


まだまだ半人前のぼくは、

はたして日々をしっかり噛みしめられたのかどうか。

ふり返ってみても、

足りていないような気がしておるわけです。



そんなこんなで。

ふと、思い出した風景がある。






ある繁華街の片隅にある、

カウンターだけの1軒のお店。


そこには、かっぷくのいい、

年輩の男性がいつもお店に立っている。


フレッシュジュースやコーヒーなどの飲み物をはじめ、

サンドイッチやホットドックなどの

軽食もたのしめる、喫茶のような場所。


お店の名前は「うめや」。

1964年からつづく老舗で、

街をぶらついた合間に

ちょっとくつろぐのにちょうどいい。


なのでときどき、

一服がてら、カウンターの宿り木でのんびりしていた。


















フレッシュジュースなんかを飲みながら、

タバコをゆっくり吹かしていると、

カウンターごし、

お客さんとお店の大将とのやりとりが、

聞くともなしに聞こえてくる。


季節の話や身の上の話。

テンポのいいやりとりに耳をかたむけていると、

音楽を聴いているようで心地よく、

自分とはおよそ関係のないような話題が

何だか新鮮でたのしい。


山菜をたくさんもらったというご婦人。

たくさんもらってありがたいのだけれど、

洗うのが大変だと、苦笑いでこぼしていた。



「自分で摘んだんなら選別して採れるけど、

 人からもらったやつは、

 いいもわるいもごちゃまぜで大変」


そういうご婦人に、大将は笑いながら言う。


「だいたい食べ物をいっぱいもってくることがまちがっとる」


大家族でもないのに、

生の食材をそんなにたくさん持ってきてもらっても

食べきれないと。


適量。


大将のそのひとことを聞いて、

なんだか奥深い話にも聞こえてきた。











別のある日。

夕刻どきの、帰宅時間のせまるころ。


注文をすませてくつろいでいると、


「新聞でも読む?」


と大将がスポーツ新聞を差し出してくれた。


お礼を言って受け取ると、

新聞の紙面に目を泳がせる。


何分かもしないうちに、

注文したパイナップルジュースができあがった。


読んでいた新聞をカウンターに置き、

南の島のような味わいのジュースをゆっくり味わう。


ああ、うまい。

何だかほっとする味わいだ。




ほどなくして、

背広姿の50代くらいの男性がやってきた。

いらっしゃい、と水の入ったグラスを差し出した大将は、

すぐにぼくのほうへと顔を向け、


「新聞、もらっていいかな?」


と、やさしく聞いた。

どうぞ、と返すと、

いましがたぼくが広げていたスポーツ新聞を

男性に差し出す。


「ああ、ありがとう」


受け取った男性は、

さも自然な流れのようにスポーツ新聞をはらりと広げ、

紙面に目を向けはじめる。


おそらく常連さんであろうその男性客は、

注文したコーヒーを待つまでのあいだ、

静かに新聞を読みふけっていた。


ごくあたりまえにも見えるこの風景に。

あうんの呼吸のような、熟達した深みのような、

なめらかな平穏さとやさしさを感じた。


まるで熟年の夫婦か、相棒のような。

言葉は少ないけれど、

たしかにそこには通じ合っている何かがあった。






また別の、とある日。


外は雨だった。

朝からの雨はいったんやんだかに見えて、

またぱらぱらと降りはじめたのだ。

けれども、降りはじめて間もなく屋内に入ったおかげで、

傘を持たないぼくも、それほど濡れずにすんだ。


「雨、また降ってきた?」

大将は、おそらくコートについた滴を見て、そう言った。



「あ、はい。またちょっと降ってきたみたいですね」


「飽きずにまぁ、よく降るねぇ」


大将がほっそりと笑った。


オレンジジュースを注文して腰をおろすと、

そっと灰皿が差し出された。

ありがとう、と言うぼくに、

大将は小さく笑みを返してオレンジジュースをつくりはじめる。


ミキサーの、にぎやかな音。


ポケットを探ったぼくは、

タバコを忘れたことに気がついた。

あれれ、とあちこちを探すぼくに、

大将が「どうしたの?」と聞く。


「タバコ、忘れちゃったみたい」


肩をすくめるぼくに、

大将は胸ポケットから自分のタバコを取り出し、

カウンターの上にそっと置いた。


「これ吸っていいよ」


ショートホープ。

ふだんハイライトを吸うぼくにとって、

好きな銘柄のタバコだった。


「ありがとう」


笑顔を浮かべるぼくに、

大将はまた小さく笑みを返して仕事に戻る。


ふたが開いた状態で置かれたショートホープの箱から、

1本取って、火を点ける。


そうしてタバコを吸っているうちに、

オレンジジュースができあがった。









仕事を終えた大将は、

カウンターに置かれたショートホープの箱から

1本すうっと取って、

厨房の中で静かに紫煙をくゆらせた。


1本目を吸い終わってしばらくすると、

ほかのお客さんがお店にやってきた。


ぼんやりとくつろぐぼくに、


「遠慮せず吸っていいから。

 ぜんぶ吸ってもいいよ」


笑いながらぽつりと言うと、

大将はお客さんのもとへと去っていった。


ショートホープの箱は、

口をこちらに向けて、ごく自然な感じで置かれている。


ぼくは、うれしさと、

感謝の気持ちと、敬意のような気持ちでいっぱいになりながら、

大将のショートホープをもう1本吸った。



大将からもらったショートホープ。



タバコをもらった、ということ以上に、

ぼくは、何かいいものをもらったような。

そんな気持ちだった。




また別の日。

クリスマスの装飾が片づいて、

街はもう新年を迎える雰囲気でにぎわっていた。



カウンターに座ると、いつものように


「はい、いらっしゃい」


と笑顔で迎えられた。


「外は寒いね」


「寒いですね」


「何にする?」


「それじゃあ、イチゴジュースお願いします」


注文のあと、ぼんやりとタバコを吸っていると、

カウンターごし、

イチゴたちが撹拌(かくはん)される

ミキサーの音が聞こえてくる。


「はい、どうぞ」


ストローの差されたグラスが目の前に置かれると、

イチゴの甘酸っぱい香りがふわりと伝わってきた。











吸い終わったタバコをもみ消して、

甘酸っぱいイチゴジュースを堪能(たんのう)する。


ああ、おいしい。

寒い、冬の体に、春のような風味が染み込む。


鼻の奥に、少しだけ風邪の気配を感じていたのだけれど。

単純なぼくは、そんな気配すら吹き飛んでしまいそうだった。



帰るとき、

タバコのお礼を言って席を立ち、

サイフにいっぱい詰まった小銭をかきわけていると、

大将がゆっくり言った。



「あわてんでもいいから。

 のんびり、ぼちぼちいこう」



たしかに。



サイフの中には、外国の硬貨や

神社とかお寺で買った「福銭」などがじゃらじゃらで、

そのうえ影になった手元から

使えるお金を探すのに必死になっていた。


そんなぼくの心情を見透かしたのかのような、

大将のひとこと。



あわてんでもいいから。

のんびり、ぼちぼちいこう。



それは、そのまま人生の金言となって、

しばらくぼくの頭の中をぐるぐると回りつづけた。


お会計を済ませ、

お店の前を立ち去ろうとするとき、

大将がにっこり笑いながら言った。


「サンキュウベリマッチ、ありがとう。

 それじゃあ、よいお年を」



去年の今ごろ、昨年末のできごと。



あわてんでもいいから。

のんびり、ぼちぼちいこう。



2014。


あわてなくてもいいから、

のんびり、ぼちぼちいきたい。


そんなふうに思ったのであります。












< 今日の言葉 >


『カニカニカーニバル』

(カニ食べ放題バスツアーのキャッチコピー)




2013/11/03

家原美術館だより#5 〜「局」編







2013年。

早いもので、もう11月になりましたが。

みなさまいかがおすごしでしょうか。


私、家原は、絵を描いたり、

お菓子を食べたり、

夜な夜な音楽を流して踊ったり、

すり減った靴のかかとはいったいどこへ行ったのか

真剣に探しまわったりしております。



さて。


長らくお伝えしてきました「旧・山田薬局」での記録、

『家原美術館だより』。



第5回目『「局」編』では、

準備期間から会期中に起きた出来事などを

ぽつぽつお伝えしたいと思っております。



家原美術館2013年の記録としては、

おそらくこれが最後となりますので、

どうぞしっかり噛みしめてくださいませんか。



これまでおつきあいいただいたリスナーのみなさん、

どうもありがとう!



これからも、日々感じたことなんかを書いていくので、

ひまなときに読んでみてネ!












それでは『家原美術館#5 〜「局」編」。

はじまりはじまり。








会期中は、近所のパン屋さんでパンを買って食べていました。
親切なお店の人が「これも食べて」と、いつもいろいろ「おまけ」をくれたので、
お昼ごはんやおやつが豪華になりました。









パン屋さんがお休みの時は、お客さんからのおみやげやお菓子を食べてすごしました。
ときには、食べる時間がない日もありましたが。
お菓子の日でも、コーン系、小麦系など、バランスよく食べました。










今回、何十年ぶりかに会った、地元の同級生も来てくれました。
そんなひとりが「ついで」ということで、お弁当を作ってきてくれたこともありました。






ポロポロこぼれるお菓子は、こぼさないよう、気をつけて食べました。









パン屋さんと話していて、
「クリームチーズがあったらいいのに」と言うと・・・



ピスタチオがトッピングされたクリームチーズをつけてくれました。
本当に。おまけを超えたおまけをつけてくれて、
うれしい気持ちでいっぱいになります。



ほうじ茶プリンもおいしかったです。










今回の家原美術館を観るために。
わざわざ千葉から来られたお客さんもいらっしゃしました。
まさかこんな場所で、と思っていた顔に会えて、驚きとうれしさで
2センチくらい宙に浮いた気分でした。









庭で育てたイチジクを持ってきてくれた方もいらっしゃいました。
いろいろな種類のイチジクは、見た目もたのしく、
味も食感もそれぞれちがいました。









旧山田薬局、店舗入口扉に貼られたステッカー。
このメッセージに「今日もお元気でやるぞ!」と奮起しました。







会期中、いろいろなお客さまが来られて、

毎日がお祭りのようでした。




アカペラ歌手の方は、会場を見て、

「ここで歌えたらたのしそう」

と、おっしゃっていました。



バンジョーとアコーディオンで演奏するお二人も、

偶然、会場の前を通りがかって、

家原美術館を堪能していってくださいました。



シタールを演奏する方は、

今は亡き師匠に受け継いだ楽曲を伝承するためにも、

いつか演奏を聴いてもらえたら、とおっしゃっていました。



200年前のピアノ(チェンバロ)を

修復するお仕事をされている方にもお会いしました。


当時の素材、技法で修復するために、

ウィーンへ行ったり、

素材の解析・分析をしたりするのだという

興味深いお話を聞かせていただきました。


塗装に関して質問すると、

チェンバロやバイオリンなどは、

ラックカイガラムシという虫をすりつぶし、

「シェラック」という樹脂状の成分を精製して

それを塗料として使うとのことでした。



ほかにも、

若い女性の宮大工さんや、神具屋さん、

舞妓さん、入れ墨だらけのお兄さん、

居合道6年のアメリカ人男性、

テキサスから観光で来られたお客さん、

台湾からの留学生さんなど。


本当に、いろいろな人とお話しできて、

刺激的な毎日でした。


いつも来てくれる友人、知人、

近所のお店の方たち、お世話になっている方たち、

何年も前から展覧会に来てくれていて、

ようやく顔を会わせることができた方たちなど。


とにかく、感謝しきりの毎日でした。









そんななか、

ひとりのお客さんに出会いました。



若い、女性のお客さん。


2004年生まれの小学4年生。

ピンク色の自転車に乗った、小さなお客さまでございます。



その子は、友人と2人で家原美術館に来場しました。

はじめのうちは、友人と2人で会場の絵や展示物を見て、

わいわいたのしげにはしゃいでいましたが。

友人のほうが、



「そろばん行かなきゃ」



と、会場を出て行くことになったのです。



友人が戻ってくるまでの2時間弱。

その子は、家に帰るという選択ではなく、

会場に残るという選択肢を選びました。



会場に残されたぼくと、その女の子。



昨年の展覧会(家原美術館2012)でも、

そんなような「若いお客さま」とのやりとりがあったので。

つくづく、こういう「向き」があるのだなと、

われながら内心、苦笑いしたのではありますが。



今回、出会った「若いお客さま」。

彼女はタブレット端末を手に、

会場の風景をパシャパシャ撮影しておりました。



「それ、誰の?」



と訊ねるぼくに、



わたしの」



と、ごく自然な感じで答える彼女。



聞くところによると、

「パパの会社に自分の部屋がある」そうで、

そこには、おもちゃやゲームがたくさんあるとのことです。



「パパの会社って。パパ、何やってるの?」



しゃちょう」



社長。

その答えは、あまりにシンプルで、

それでいて、すべての疑問を解決してくれるような。

そんな回答でした。




彼女は大きな紙袋を持っていて、

そのなかには、折り紙やぬいぐるみ、

キラキラした透明のプラスチックなどのおもちゃが、

わらわらとつまっていました。



まるで「お泊まりセット」のような紙袋を、

出かけるときに、彼女はいつも持ち歩いているようすです。



自分にとって大切なものを、

いつも、肌身離さず持ち歩いている彼女の姿に。

どこか、懐かしいような、

胸の奥がちくっとなるような、

そんな感じを受けました。




彼女は習い事をたくさんしていて、

たしか、ピアノやバイオリンなどをはじめ、

土曜日や日曜日には、

お料理や運動などを朝から夕方までやる「教室」に

ひとりで行っているとのことでした。



バスに乗り「教室」へ行き。

泳いだり、ダンスをしたり、体操をしたり、

お料理をして、みんなで食べたり。



教室のあとは、

そのまま岩盤浴へ行ったり、

食堂でごはんを食べたり。



「岩盤浴のとき、アロマの風であおいでくれる。

 すごくあつい風で、あせがすごく出る。

 ひとり10回だけど、おねがいするともっとあおいでくれる」



話を聞いていると、

どこかのOLさんの話を聞いているような錯覚に陥るほどの内容と、

よどみのない、しっかりとした話しぶりでした。




自分が小学4年生のとき。

たしかに、ひとりでバスに乗って、

出かけたりしておりましたが。


街なかの百貨店や映画館へ行ったり、

およそ小学生が行くようなところではないお店で、

当時「ガレージキット」と呼ばれたフィギュアを買って

散財したりしてばかりおりました。



目の前の彼女と比べると、

なんとまぁ無駄な時間をすごして、

無駄なお金を使っていたのでしょうか。




気づくとぼくは、

小学4年生の彼女に、



「え、その岩盤浴の温泉って、瓶牛乳、売ってる?」



と質問しておりました。



そんな質問に対しても、

彼女はひるむことなく、まっすぐに、



「これくらいの細さで、これくらいの大きさのやつ。

 たしか、特濃牛乳っていうやつが売ってる」



「その瓶の文字ってさぁ、プリント?」



そんな質問をするほうもするほうですが。

彼女はこくりとうなずき、こう言いました。



「うん、プリント。緑の文字で書いてある」



本当に。

しっかりした子でございます。













 その彼女と、しばらくすごして。

17時ごろ、そろばん塾に行った彼女のお友だちが戻ってきました。



ふたたび、にぎやかさを取り戻した家原美術館の館内。


小さなお客さんたちは、

薬局部分、お座敷などをうろうろと、

思いのままに散策して、

お名前書いて帳にたのしくお絵描きをしていってくれました。



最後、おなかが減ったというふたりに、

お客さんからもらったお菓子を、ひとつずつあげました。



「中で食べちゃだめだよ」


というぼくに、


「なんで?」


というふたり。


「ここは『美術館』だから」


というと、


「わかった」


と、素直にうなずきました。




外に出た3人は、

家原美術館の入口前に並んで、

お菓子を食べました。



すると、先の彼女が、



「韓国のり食べる?」



と、韓国のりのパックを2つ取り出しました。



「8枚入りだから、16枚。
 
 ひとり5枚で、ジャンケンして勝った人が6枚ね」



ものすごい早さで計算する彼女に「頭いいね」と言いつつ。

さっそく3人でジャンケンをしました。



勝ったのは、言い出しっぺの彼女。

韓国のりを開封した彼女が、

1枚ずつ、のりを配ってくれました。



「韓国のりって、おいしいよね」



のりを食べながら、うれしそうに目を細めた彼女は、



見て、こうやってすかすときれい」



と、家原美術館の白熱灯に、

韓国のりを透かしました。



光に透けた韓国のりを、

彼女はタブレットで撮影しはじめました。



本当に。


それはまるで、カフェか何かで

スイーツの写真を撮る女子のごとく感じで。

いや、もしかすると、

路傍(ろぼう)で見つけた、

きれいな花を撮るような感じかもしれません。











小学4年生という年齢だけでは量れない、

彼女たちの持つ世界。



大人たちが子ども扱いしすぎたりして、

ときどきいろいろ大変そうだけれど。



自由でいいな、と思いました。



韓国のりを食べ終わった彼女たちは、

路肩に停めてあった自転車にまたがって、

帰り支度をはじめました。



「これっていつまで?」



彼女が少し大人っぽい顔で聞きました。



「9月24日までだよ」


そう答えるぼくに、彼女は、



「またきていい?」


と、少し子どもっぽい顔つきで言いました。



「いつでも来ていいよ」




夕闇に消えていく、彼女たちの後ろ姿。



彼女らといるときに、

尋問とかされなくてよかったな、

と思いつつ。

小さなお客さまたちを見送りました。





後日、また別のお友だちを連れて3人で現れた彼女は、

作品を見たり、説明したり、

タブレットでたくさん写真を撮ったり、

縁側に座ったりして、

自分のお気に入りの遊び場を自慢するような感じで、

わいわいたのしんでくれたようすでした。



「来てくれたんだね」



そういうと、少し照れくさそうにしながらも、



「写真とって」



と、記念写真の撮影を頼んできました。



廊下の「アリナミン」を囲み、3人並んだ写真。


タブレットに収まった記念写真は、

どんな思い出になったのでしょうか。










母の友人と中学生のお孫さんが、

夏休みの宿題を兼ねて《家原美術館》へ来てくれました。


宿題は「美術館についてのレポート」だそうです。



ぼくの説明を聞きながら、

いろいろ見て回り、写真を撮っていくお孫さん。

最後、お名前書いて帳にも、

感想と絵を描いていってくれました。



後日、そのレポートを撮影した写真を送っていただきました。

すごくきっちりまとめられたレポートを見て、

感心するとともに、



「美術館のレポートに、家原美術館って・・・」



と、少し、笑いがこみ上げました。

このレポートを見た先生方は、

いったいどんなふうに思うのでしょうか。



そう思っていたのですが。



それからまた数日経って、

そのお孫さんのレポートが賞をもらったと。

そんなうれしい報せを聞きました。


立派に調べてまとめてくれたことは

お孫さんの功労で、

ぼく自身は何もしていませんが。


受賞の報せを聞き、

ぼく自身もすごくうれしく思いました。











美容師のお客さんが来てくれました。
2回、ご来館いただきましたが。1回目は金髪でした。



つい数日前にお会いしたときは金髪だったのに。
真っ赤な髪の毛になっていて、びっくりしました。
金髪も、赤髪も、どちらも似合います。












準備・片づけのときに、こんなものがありました。
「BROVARIN(ブロバリン)」という薬。
箱を開けると、不思議な梱包が出てきました。




ティッシュペーパーでくるまれたうえに、
輪ゴムできっちり井桁に留められて。
赤マジックで「上」と書かれています。




裏返してみるとまた「上」と書かれていました。
ということは「上」とは、表裏ではなく、天地を示しているようです。




ティッシュペーパーをめくると・・・




こんな感じでした。
こういう「人の手」を感じるものを見ると、
いろいろ想像をかき立てられて、すごくおもしろいです。










展示準備中の店舗部分。








調剤室・試験室より









水洗いしたドリンククーラー。
ぴかぴか部分に風景が映り込んできれいです。










粉ミルクのPOP。
「お姉さん」になったからでしょうか。
少し大人びた顔の女の子です。









棚に並べるための薬品類。







色分けして展示するために、薬品類を選別していきました。







まずは青色から集めました。







「コトブキ浣腸」「マラソン乳液」「ダイン展着剤」など。
さわやかな青が並びます。







「ファイン」豚毛歯ブラシ







ずいぶん前の「ultra ban(ウルトラバン)」。
宇宙的でかっこいいです。







愛犬の蚤(のみ)取りスプレー「ポチ」








子供用歯ブラシ





オーバーオールを着た少年が、
ものすごく高い一輪車に乗っています。






「グラスターゾル」


















ベビー爪切鋏(つめきりばさみ)







「マルチタイプ  パンティーストッキング」








「清潔をつつむおしゃれな手袋 ラブバンバン」








「アイクリーム」









「ファイン」歯ブラシ 使い捨て用








いっぱい並んで、わくわくします。






色とりどりでたのしいです。








「プリティ」





「数分間で…きれいになります/至って簡単で、プリティの少量を
目的の個所につけて、マッサージして下さい。
パーティー・お出掛け等の、その場でも間に合う程その効果は速やかで、
またその美しさは長時間保ちます。」(原文ママ)















ベビーパウダー各種







「フタニアン hi クリーム」







「サンクロン」







と、こんな感じで、つめ込んでいきました。









「どこでも眠れます」アイマスク


















台風の影響で、すごくどしゃ降りの雨の日もありました。












あるお客さんが、

「ハグヨ」というぬいぐるみを

持っていらっしゃいました。



ハグヨ。



胸に『HUG YOU』と書かれたニットを着て、

赤い「ポシェット」をかけたお人形さん。



聞くところによると、この「ハグヨ」ちゃん、

日本各地はもとより、世界を旅するお人形らしいのです。






この「ハグヨ」ちゃん。

世界に「ハグ」を広めるために、

いろいろな場所を回っているマスコットとのことで、

人の手から人の手へと、

次々、「持ち主」が変わっていくらしいのです。



「持ち主」は、ハグヨちゃんを連れて、

いろいろな場所を回ったり、

いろいろな人に会ったりして、

ハグヨちゃんと記念写真を撮っていく。



「持ち主」となった人は、

1日で次の人に渡してもいいし、

何カ月に渡って持っていてもいいし、

それは個人の自由。



次の「持ち主」選びの基準は特になく、

その人が、

ハグヨちゃんのことを「大切にしてくれそうな人」だと思えば

「持ち主」としてハグヨちゃんを託せばいい。



赤いポシェットの中には、

小さな手帳が入っていて、

そこに、これまでの「持ち主」の記録が書かれている。



何月何日に、誰と、どこに行ったのか。

どんなことがあったのか、など。

いろいろなことが書き記してあるらしい。


・・・と、いうことでした。




ハグヨを連れてきてくれたお客さんは、

うれしそうにハグヨちゃんのことを話すと、

ぼくとハグヨちゃんとの写真を撮らせてほしいと

おっしゃいました。



写真はあまり得意ではありませんが。

そのようなことであれば、

よろこんで写真に収まりましょう、ということで、

ハグヨちゃんを手に、

撮影していただいたわけでございます。











本当に。


いろいろな人たちがいて、

いろいろなことが、

いろいろな場所でおこなわれているのだなと。


そんなふうに思いました。



まだまだ知らないことだらけ、ですね。














展覧会が終わって。


きれいなお花や、

かわいいお菓子なんかをもらいました。













展覧会でお会いしたお客さまから、

約束どおり、わざわざ手ぬぐいを送っていたきました。


おまけの1枚もつけてくださり、

すごくうれしくて、少し飛びあがりました。


こうしてぼくの手ぬぐいコレクションに、

2枚の手ぬぐいと、すてきな思い出が、

新たにまた加わったのであります。














家原美術館2013 有松・旧山田薬局》。




もう、ずいぶん前のことになりますが。



ご来場いただいたお客さまのおかげで、

たのしい日々をすごすことができました。



本当に、ありがとうございました。




これからも、家原は、

描いたり、つくったりしていきます。


そして、飾ったり、展示したりしていきます。



ですので、どこかで目にした際には、


「よっ、家原!」


と声をかけてくださいまし。




次回、家原美術館をどの地で開催するのか。

それはまだ未定ですが。

またみなさまのお目にかかれれば、と思っておりますゆえ、

どうぞ今後とも末永くおつきあいのほど

よろしくお願いつかまつりまするで候でござる。



それでは。



家原美術館だより、2013。


ご清聴、ありがとうございました。
















・家原美術館2013 はじまり

・家原美術館だより#1

・家原美術館だより#2

・家原美術館だより#3




< 今日の言葉 >


SUPER DRY 超絶乾燥』

(外国人が着ていたTシャツに書いてあったプリント/黒地にピンク文字
 /英字部分はビールのロゴっぽい書体。訳は合ってるけれど、ずいぶん意味がちがう