2009/12/17

幻影




「ステージから発射」(2010)





古いノートを読み返していたら、
こんな文章に目がとまった。
たぶん、書きかけた小説のネタか何かだと思う。


(以下、ノートの書き写し)


12月。
雪山へUFOを見に行く。
「彼」を含めた4名(彼、男、男、女)のパーティで。
「彼」は唯一の登山経験者で、
その経験と知識を買われて誘われた。

UFOの「秘密」を守るため、
この計画は誰にも話していない。
無許可(または偽名)で入山。
ひと気のない古びたバンガローで、各人が落ち合う。

火にあたりながら、UFOの話をする4人。
そのなかのひとり(男)が、「彼」の自尊心を傷つけた。
皆にバカにされたと思う「彼」。
「彼」が好意を寄せる彼女(女)も笑っている。

吹雪。奥深い山。
必死に山頂を目指す4名。

「彼」を真っ先に笑った男が
窮地(きゅうち)に立たされたとき、
命運を握る「彼」が、
“ 思わず ” ザイル(登山用ロープ)を放してしまう。

先頭にいた人物(男)に、“ 故意 ” だということを
“ 悟られた ”ような思いに苛まれる。

一命を取り留めた4名。
雪深いなかでビバーク
(不時泊。緊急時のやむをえない停泊)をする。

何とかして助かりたい。
そう思った「彼」は、
ひとり、ザイルを足に結わえつけて
辺りの様子をうかがった。
吹雪のなかをむやみに歩き回ることは危険だと、
登山経験豊富な「彼」は重々承知のはずだったが。
疑心暗鬼もあってか、「彼」は、
すっかり平常心を失っていた。


と、「彼」の目に、
3つの人影が近づいてくるのが見えた。


再び吹雪きはじめた視界は、古ぼけた映画のように、
うっすらとした陰影がおぼろげに見えるだけ。


夢中で影を突き飛ばす。
悪霊でも追い払うように。


3つの影が、音もなく消えた。


雪深い、斜面の先。
目の前には、うす黒い渓谷だけが広がっていた。



ひとり、下山した「彼」は、
幾日か経ったある日、
こんな記述を読んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

発見された死体。
3体。

女の遺体は、雪に埋もれていたせいか、
腐敗の進行が遅く、大きな損傷もなかった。

生活反応のある傷が、
左肩と右足首脱臼だったことから、
死因は凍死と判断。

男の遺体、2体のうち1体は、
損傷が激しく、見た目に身元を
判別するのも難しいほどだった。
陽の当たる場所にあったせいで腐敗も激しく、
そのうえ、おそらく冬眠あけであろう、
空腹のクマらしき動物の餌食となっており、
頭蓋骨が砕かれ、
内蔵もほとんど残っていない状態だった。

もう一方の、男の遺体は、
少し離れた谷の中ほどで発見された。
死因は頸部(けいぶ)の打撲によるものだった。
生活反応のない、死後の傷からは、
何ら不自然な様子も見られず、
転落の際に負った傷跡だと判定。
それにより、ほぼ即死状態だったと判断。

岩壁に突き出た岩に頸部を打ちつけ絶命、
そののち、岩にぶつかりながら
谷まで転げ落ちたと推測。

こちらの身元は、
歯科の記録と親族によって明らかになった。

前者2名は、
生存者からの供述で招かれた親族によって、
「本人」との確認がなされた。
(通院のカルテなし、病歴なし)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「彼」は思った。

例の「3体」も。
雪どけの川に流されたか、
それとも空腹のクマが運び去ったか。
永久凍土のマンモスのように、
いまも静かに眠りつづけているのか。

3人の遺体は、
いまだ発見されず、
どれも「行方不明」のままだ。


ひょっとしたら、生きているのかもしれない。


毎晩のように、
「彼」は、同じ夢に悩まされる。

3人と、3つの影。
手を放す映像。フラッシュバック。


「違うんだ、わざとじゃないんだ」


「彼」はおびえる。
日々、おびえて暮らす。

3つの影。3人の影。
そして、目の粗い、
ヒモ状の手ざわりにザイルを思い出す。


「違う、あれはわざとじゃない」


繰り返し「彼」は言う。
自分に言い聞かせるようにして。

見えない「影」におびえながら。
「彼」は “ 平穏な ” 日常を生き続けている。

たとえ目を閉じても、眠っても。
その影が消えることは、決してない。


(以上、ノートの抜粋)



さて。

そんなぼくが最近見た夢は、
SMAP(スマップ)の一員になって、
ステージに立つ夢だ。

6人目のSMAPとして(正確には7人目か)、
ステージのソデでスタンバイするぼく。
今回のステージが、
SMAPとしてのぼくの初舞台でもある。

ほかのメンバーに比べて
“ 若干 ”見劣りする自分を気にして、
ややナーバスになっている。
緊張が半端じゃない。
硬直する姿を見て、
木村(拓哉)くんがぼくの肩をポンと叩いた。

「大丈夫だって」

力強い、木村くんの手が、ぼくの肩をつかむ。

ステージの向こうからは、大声援が聞こえてくる。

白い歯をのぞかせて、ひとつうなずく木村くん。
ぼくは、少し表情をゆるめて、
大きくうなずき返した。

「よし行くぞ!」

円陣を組んで、掛声をかけると、
音楽が鳴り響いてステージに向かって走り出した。

まぶしい光と声援。


ぼくは、そこで目を覚ました。



・・・・なんじゃこりゃ。

起きたとき、
少しバカバカしく思って、ふっと笑って、
そのあと少し、恥ずかしくなった。

そして思った。
やっぱり木村くんは、かっこいいな、と。



< 今日の言葉 >

「同情するなら金をくれ」
(家なき子)

「お金なんかより、やさしさをください」
(家のある子)