2009/09/09

科学と学習


「一人故郷を見下ろす人工衛星」(2009)






右足と左足の長さが微妙に違っていたため、
砂漠をぐるぐると歩き続ける男の話。

昔、江戸川乱歩の小説(だったと思う)で
読んだ記憶がある。


先日、新聞を読んでいたら、
ドイツの研究チームが
ある調査したという記事が載っていた。

30人ほどの被験者に、
目隠ししてもらって歩いてもらう。

場所は、砂漠であったり、森のなかであったり。
広い場所を、目隠して
数十分(数時間だったか)歩いてもらう。

各被験者の動きは、
「GPS」観測システムで記録していく、という実験だ。

目隠ししたまましばらく歩いていると、
ほとんどの人が左回り、または右回りの軌道で
ゆっくりと「円」を描きはじめたという。

せまい人では直径20メートルの「円」を描いて、
「ぐるぐると」同じ範囲の場所を
歩きつづけていたそうだ。

手元に新聞がないので、
正確な数字は忘れてしまったけれど。
被験者の中で、
比較的まっすぐ歩き続けられたのは、
2人か3人(およそ1割)の人だった、と。

研究チームの発表によると、
左右の足の長さの違いが原因ではなく、
視覚を遮られたことで、
目的となる対象物がなくなり、
まっすぐ歩けなくなるのだ、ということらしい。


なるほど。


「なぜ、ネコは家(すみか)から
 遠く離れた場所に置き去りにされても、
 戻ってこられるのか」

という疑問から生まれた実験らしいけれど。

昔、ネコの頭の両側に棒磁石をくくりつけて、
迷路の中に入れる実験映像を見た。

その迷路は、
何度か繰り返し歩かせたことのあるもので、
被験ネコにとっては「いともたやすい」迷路だ。
無事に出られれば、「ごほうび」ももらえる。

磁石を取りつけたネコと、
そうでない「ふつうの」ネコ。

その結果は、というと。

「ふつうの」ネコは、
すんなりと迷路を出ることができて、
磁石をくくりつけられたネコは、
壁にぶつかったり、
行き止まりに入っては
また同じ道をぐるぐると歩きつづけたりで。
なかなか迷路から抜け出られなかった。

この実験で分かったこと。

それは、

「ネコは、地球の磁場(磁気)を利用して、
 自分の位置や道筋を把握している」

ということのようだ。

ネコが言葉をしゃべれるわけでもないので、
ネコの気持ちは分かりようもない。

けれど、もしぼくがネコなら、
頭に磁石をくくりつけられたら悲しいので、
それだけで「ふつう」じゃなくなって、
できることすらできなくなるのかもしれない。



『まだかなまだかな
 学研のおばちゃんまだかなー』

小さいころ、テレビのCMで
そんなフレーズをよく聞いた。

でも、ぼくの母親は当時、
「学研のおばちゃん」をやっていたので、
そんなふうにして首を長くして待っていなくても、
朝起きれば台所にいるし、
学校から帰れば居間とか庭にいたので、

いつでも「学研のおばちゃん」に会えた。


そんな特権を持って育ったぼくは、
さらなる特権、

「ほしい教材(ふろく)があれば、
 何年生の『学研』だろうと
 取り寄せることができる」

をフルに活用して、
人体骨格見本やカブトガニ飼育セットなどを
取り寄せてもらってはたのしんでいた。


・・・話を本筋に戻して。

先日、月を見上げていて、

「今日は月が大きいな」

という話になった。

まだ、暗くなって間もないころの「黄色い月」。

聞くところによると、
赤みがかった黄色の、色の波長のせいだとか、
黄色という「暖色」が膨張色だから、だとか、
低い位置だと、周りの対象物が近いせいで
「大きく」見える、とか。

いろいろな「説」を聞く。

赤やオレンジに染まった夕日(太陽)も、
同じような理由で「大きく」見える、
という話も聞いたことがある。

根拠や理論は、わからない。

仮に頭で「解かっても」、
やっぱり「わからない」。

だって、大きく見えるんだから。
だったらそれでいいんじゃないの?

そう思ったりもする。

なぜならぼくは、科学者じゃないから。


< 今日の言葉 >

「魔女は追われ、鞭(むち)打たれ、
 石を投げつけられたり
 棒で打たれたりして殺された。
 『シャリバリ』した者にはすぐに
 「赦免状(しゃめんじょう)』を出した」



シャリバリ:
共同体の規範を逸脱したものに対する
儀礼的な制裁(リンチ)。

(『魔女狩り』/
 ジャン-ミッシャル・サルマン著
 を読んでのメモ書きより)